乗務員不足が深刻だ。コロナ禍で一時的に採用を縮小する事業者も存在したが、各社の動きが再び積極的になっている。乗務員不足の背景や今後を整理する。なお国の統計は、公表に数年かかるものも多いため、データはコロナ禍前の数字を紹介する。
(記事の内容は、2022年11月現在のものです)
文、写真/成定竜一
※2022年11月発売《バスマガジンvol.116》『成定竜一 一刀両断高速バス業界』より
■再び深刻な乗務員不足
まず、国全体でみると、日本の生産年齢(15~64歳)人口は、ピークだった1995年に比べ約15%減少した。終戦直後、各年に260万人超が誕生した「団塊の世代」がここ10年ほどでリタイアした一方、今年の新成人は約120万人。100万人以上の「働き手」が、毎年、消滅しているのだ。
極端な人手不足は、したがって、バス業界だけの問題ではない。帝国データバンクの調査によると、正社員不足企業の割合は、「旅館・ホテル」「情報サービス」らが上位に並び、「運輸・倉庫」は8位に過ぎないらしい。
■実は増加しているバス乗務員
次に、事業用バス乗務員の総数を見ると、意外かもしれないが、ほぼ同期間で約20%も増加している。
この20年間、貸切バスの規制緩和で新規参入が相次ぎ、バスの総数が増加した。同時に、運行管理の規制は強化が進み、同じ業務量でも人を手厚く配置する必要も生まれた。
働き手は減り、乗務員の定数は増加した。足りないのは当然だ。
そのような中、各業界共通の戦略は、「若年層/女性/外国人/シニア」4分野の活用促進だ。ところが、バスは外国人労働者受け入れの各種政策の対象となっておらず、また健康起因事故が相次ぐ現状を考えると、シニアに頼りすぎるのも難しい。
残るは、若年層と女性だ。前者の対策として、今年、大型二種免許の受験資格が見直された。条件を満たせば19歳から大型二種を取得できる。
鉄道は、同業者間の転職が難しい分「駅員→車掌→運転士」と社内育成できるのに対し、バスは育成してもすぐに転職する恐れがあるが、そうも言っておられない。
高校新卒者を採用し、1年程度で乗務員デビューさせる事業者は増えるだろう。もっとも、少子化と進学率上昇で高校新卒者自体が貴重となっており、遅きに失した印象だ。
女性乗務員は、現在、全乗務員中2%程度。自衛官でさえ、女性比率は約8%あるという。休憩室やトイレなどの営業所施設、制服、勤務シフトなど工夫が急務だ。大手私鉄系事業者らが様々な施策が行なっているから、参考にできる。
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