コロナ前から厳しかった長距離夜行バス 生き残るのに必要なコトとは

コロナ前から厳しかった長距離夜行バス 生き残るのに必要なコトとは

 ブルートレインの代替として成長してから30年。夜行高速バスは一定の役割を終え転換点を迎えつつある。一方、震災で新幹線代替輸送に活躍し、久しぶりに現場に活気が戻る場面も見られた。高速バスが生き残るための処方箋をまとめた。

(記事の内容は、2021年3月現在のものです)
文/成定竜一、写真/成定竜一、東北急行バス
※2021年3月発売《バスマガジンvol.106》『成定竜一 高速バス業界一刀両断』より

■収束後も完全回復しない恐れが

被災し運休(2月14~24日)した東北新幹線の代替輸送は、制度の特例を活用し各社が応援に。ジェイアールバステックと東日本急行の2台口が東京駅から仙台へ発車
被災し運休(2月14~24日)した東北新幹線の代替輸送は、制度の特例を活用し各社が応援に。ジェイアールバステックと東日本急行の2台口が東京駅から仙台へ発車

 「コロナ後」の高速バスの需要は、どの水準まで回復するだろうか。高速バスは、コンサートなどの「都市型消費」や出張といった「地方の人の都市への足」として成長した。

 だが、コロナの影響で地方在住者の都会への移動は止まっていた。収束後も、需要が完全には回復しない恐れがある。たとえば学生の就職活動で、「二次面接まではリモート」が定着するというようなケースだ。

 もっとも「インターネット普及で出張が減る」と言われた20年前と比べ、高速バスの輸送人員は2倍に、東海道新幹線や航空も2割増加していたのも確かで、読みづらい。

■京急バス夜行全撤退の背景

東北急行は最大3号車まで運行(写真:東北急行バス)
東北急行は最大3号車まで運行(写真:東北急行バス)

 2月15日、京浜急行バスが、夜行全路線の休止、廃止を国に届け出た(弘前線、宮古線は共同運行先による単独運行化。現在はコロナで運休中)。

 同社に限らず、長距離夜行路線はコロナ前から退潮傾向だった。

 理由は2つ。まず新幹線網の拡充だ。北東北、北陸、南九州の人が東阪で「朝から本社で会議」「コンサートを閉演まで楽しみ、翌日は地元で仕事」という際も、新幹線で日帰り可能になった。次に、ツーマン運行による人件費率の大きさ。損益分岐点が高く、乗車率が少し下がるだけで赤字化する。

 高速バスブームの端緒となった同社の高速バス事業だが、アクアライン系統など短距離路線に陣容を絞る。そもそも多くの路線を撤退済みで、新幹線の直通がない4路線だけ残っていた。ブルートレインの代替として成長した夜行高速バスだが、30年が経過し一定の役割を終えたことを象徴している。

次ページは : ■苦しい夜行路線の処方箋

最新号

【9月20日発売】巻頭特集は「東急バス」!! ほか楽しいバスの企画満載の バスマガジン126号!!

【9月20日発売】巻頭特集は「東急バス」!! ほか楽しいバスの企画満載の バスマガジン126号!!

バスマガジン Vol.126は9月20日発売!! 美しい写真と詳細なデータ、大胆な企画と緻密な取材で読者を魅了してやまないバス好きのためのバス総合情報誌だ!!  巻頭の[おじゃまします! バス会社潜入レポート]では、東急バスを特集。東京都から神奈川県において都市部から住宅地、田園地帯まで広いエリアを綿密なネットワークを展開、さらに高速路線バスやエアポートリムジンも大活躍。地域住民の足としてはもちろん、首都圏の動脈ともいえる重要な存在だ。  続く特集は、ついに日本に上陸しさらに種子島での運行が決まった、ヒョンデの電気バス[ELEC CITY TOWN]の試乗インプレッション。日本におけるヒョンデの本拠地である横浜・みなとみらい地区で、徹底的にその性能を確認した。  バスの周辺パーツやシステムを紹介する[バス用品探訪]では、なんと排出ガスからほぼ煤が出なくなるというエンジンオイルを紹介。この画期的な商品「出光アッシュフリー」について、出光で話わ聞いてきた。  そして後半カラー特集では、本誌で毎号、その動向、性能を追跡取材してきた「カルサンe-JEST」。このトルコ製小型電気バスがついに、運行デビューを果たした。その地は長野県伊那市と栃木県那須塩原市。今後の活躍が期待される出発式を紹介する。