コロナ前から厳しかった長距離夜行バス 生き残るのに必要なコトとは

■苦しい夜行路線の処方箋

移転予定だった京急の新しい品川BT。結局使用せずクローズに
移転予定だった京急の新しい品川BT。結局使用せずクローズに

 とはいえ、夜間の、または格安の長距離移動ニーズがゼロになるわけではなく、若年層を中心に一定の需要はある。他の夜行路線が永続するためには何が必要か。

 運行面では、JR系事業者らが、広域運用と組み合わせたワンマン乗り継ぎ体制を確立し、コストを抑えている。他社でも「乗合バス型管理の受委託」活用によりワンマン化は可能だ。

 ちなみに、京急との共同運行から単独運行化する弘南バスや岩手県北バスは、地元から仙台への昼行路線も持つ。後者は仙台に運行拠点もある。宮城県で乗り継ぎ体制を組めば、自社単独で少なくとも南半分をワンマン化することは容易だ。雪に備え、冬場のみツーマン運行とする方法もある。

 同時に、この連載で何度も触れたダイナミック・プライシング(運賃の随時変動)で乗車率を平準化し、運賃収入を上げる工夫も必要だ。JR(関東/西日本)、京王、アルピコらに続き、宮城交通、JR東海バス、西鉄も導入を発表した。

 「貸切バス型管理の受委託」活用すれば、繁忙日に続行便を積み増しすることもできる。

 バス事業者の営業区域単位で細分化されている路線網も整理が必要だ(調整は困難そうだが)。既に高速バス路線許認可の基準は一般路線バスとは切り離されており、高速ツアーバスからの移行組やJR系は、夜行路線については複数県をまたがって集客し、乗車率を底上げしている。

 なお、北東北は、縮小したとはいえ「夜行文化」が根強い。弘南バスは、共同運行だった「ノクターン」以外に、単独運行の首都圏路線を5系統も持つ。こちらは逆に、自社内で整理統合が進むかもしれない。

 厳しい見立てを書いたが、全国の高速バスのうち、夜行便はわずか1割強。「本丸」に当たる短・中距離昼行路線の環境はもう少し「マシ」なので、それについては次号で触れたい。

 2月、地震で東北新幹線が10日間運休し、各社とも臨時便、続行便の運行に追われた。東北出身の乗務員が、臨時便の乗務を自ら志願した例もあった。

 被災者や影響を受けた乗客らには心苦しいが、担当営業所の士気は上がった。久々の梯団出庫に向け大人数で点呼を受ける乗務員らの引き締まった表情を見て、コロナ収束と需要回復をあらためて祈った。

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