乗ることが楽しみに含まれている「観光バス」。普通の路線バスが初めて走ったのは1903年と言われている一方で、実用性という面では存在感がイマイチ薄い観光バスは、一体いつ頃できたのだろうか?
文:中山修一
写真(特記以外):バスマガジン編集部
■バスの歴史とともに歩んできた観光バス
あちこちに点在している観光名所を、エンジンで動くバスに乗り一度に見て回るサービス自体は、ごく初期の段階から“発明”されていたらしい。
どこの国で誰が最初に始めたのかは残念ながらハッキリしないが、アメリカの場合1909年にはトラックを改造した観光バス(の、ようなもの)が一部地域で既に見られた。
有名どころを例に取ると、日本を除き世界的にメジャーな旅行会社(ブランド)とされる「グレイライン」が、ワシントンDC周辺をMACK社製トラックを改造したオープンタイプのバスで巡る遊覧ツアーを1910年に開始している。
■日本では大正時代がルーツ?
日本の観光バス史に注目すると、大正10年代が黎明期と言えそうだ。大正14(1925)年時点で、東京遊覽乘合自動車が東京周辺を巡る添乗員同行のバスツアー営業を始めている。
また、大正16(1927)年1月の鉄道時刻表を開くと、富士屋自動車による沼津、御殿場、熱海、国府津などを周遊する観光バスの広告が掲載されている。
昭和初期に入ると観光バスの需要が全国的に高まっていったようだ。神戸市内の例を見てみると、神戸周辺は観光資源に恵まれていながらも遊覧サービスがなく、不便を解消するために市が先導して観光バスを走らせる計画を立てたとある。
昭和7(1932)年に免許の申請を行ったが許可がなかなか下りず、昭和11(1936)年10月にようやく営業開始となった。
アメリカのダイヤモンドT社のトラック用シャーシとリンカーン製の車体をベースに改造したものを組み合わせた、28人乗りと16人乗りの車両が計3台用意された。
神戸駅前〜湊川神社〜神戸税関〜摩耶ケーブル下〜布引の滝〜生田神社〜須磨寺〜舞子公園〜県立明石公園〜神戸駅前を半日で回るというもので、料金は大人1円20銭、こども80銭であった。
この神戸市内のバスツアー、3台の車両では足りないほど人気があったらしい。
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