日本初の連節バスは10グループ31のバス事業者で運営された~つくば85スーパーシャトルの記憶~

日本初の連節バスは10グループ31のバス事業者で運営された~つくば85スーパーシャトルの記憶~

 国際科学技術博覧会開催に伴い、万博中央駅(臨時駅)・土浦駅・牛久駅・水街道駅と会場間にシャトルバスが運行された。

 運行ルートの中でも、特に万博中央駅と会場北ゲート間は、観客輸送の大動脈となる。そのため運営にあたっては、日本で初めての連節バスの導入、システムによる発着管理、バス専用レーンの運行等特別な運営形態が採られた。

(記事の内容は、2021年7月現在のものです)
執筆・写真/諸井泉(元シャトルバス中央事業所第6グループ運営管理者)
※2021年7月発売《バスマガジンvol.108》『日本を走った初めての連節バス』より

■10のグループに分けられ第1グループがリーダー的存在に

ナンバー取り付け前の連節バスが並ぶ。東口バス車庫より万博中央駅方向を望む
ナンバー取り付け前の連節バスが並ぶ。東口バス車庫より万博中央駅方向を望む

 博覧会協会ではシャトルバスの安全運行を確保するために、各ターミナルに営業所又は出張所を設置し、旅客の誘導・整理・案内・運賃収受等の業務を行うほか、万博中央駅には整備工場・宿舎・食堂の施設を設け・円滑なシャトルバスの運営を行うものとなった。

 連節バスの運営バス事業者は画像ギャラリー内の表のように東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、福島県の31のバス事業者を10のグループに分け運営された。

 グループを大きく分けて説明すると、第1〜3グループは大手私鉄系事業者、第4〜7グループは貸切専業者系事業者+常磐交通、第8グループは常磐交通単独1社、第9グループは京成電鉄グループ事業者、第10グループは千葉県のバス事業者となっていた。

 大手私鉄系では神奈川中央交通を小田急電鉄系と考えると、唯一京王帝都電鉄は参加していなかった。また公営交通や国鉄バス(在来バスとして運行)も参加がなかった。

 特筆すべきは、福島県の常磐交通に15台もの車両が割り当てられていたことである。連節バスの運行に深くかかわっていたが、どのような理由だったかなど今では知る由もない。

 そして、地元茨城県のバス事業者は連節バスには担当しなかったものの、在来バスとして万博中央駅、牛久駅、土浦駅、水海道駅のシャトルバスの運行を担当した。

 車両の割り当て台数は、バス事業者の事業規模や貸し切りバス運行実績、人員の派遣余力等によって台数が決められていたようだ。

 第1グループは東京急行電鉄と東武鉄道が担当していたが、バス輸送対策室の万博中央駅前営業所所長は東京急行電鉄からの出向者であったことからも、東京急行電鉄は連節バスグループのリーディングカンパニー的存在であった。

 各グループは「第1グループを手本とせよ」的な雰囲気があったが、路線バスの運行経験のない貸し切りバス専業者にとってはなおさらだった。

■博覧会協会とバス会社は基本事項と車両賃貸契約を結んだ

連節バスの最後部下に担当するバス事業者名が記載されていた
連節バスの最後部下に担当するバス事業者名が記載されていた

 博覧会協会とバス事業者とは貸切バス契約を結んでいたために、業務を担当する営業所は貸切バス部門の営業所となっていた。

 連節バスの運営に選定されたバス事業者は大手事業者やそのグループ会社など経営基盤のしっかりした事業者が選ばれていたが、万博終了後の事業者動向を見てみると31社中17社が事業撤退や事業の譲渡、分社化などがされており、バス業界は科学万博以降激動の時代へと突き進むことになる。

 シャトルバスの運行にあたって、博覧会協会とバス会社は貸し切り運送契約を結ぶ。この契約は、観客輸送のための運送要請者としての博覧会協会と、シャトルバスの運行責任者としてのバス会社の基本的事項を定めたものである。

 また、今回のシャトルバスの運行の特殊事項として、使用する車両が一部従来バスを除いてすべて博覧会協会所有の車両であることがあげられるが、このため車両賃貸契約を結んでいた。

 基本的契約は、この貸し切り運送契約と車両賃貸借契約の2つとなるが、連節バスを例にとると次のようになっていた。

(1)連節バスの運行に必要な各施設の管理・旅客の誘導・整理等の基本的運営は博覧会協会が行い、バス会社は運行管理及び整備管理についての責任を持つ。

(2)運行はワンマン運行方式で、運賃収受業務は博覧会協会が行う。

(3)バス会社の責任となる事故・車両故障が生じた場合には、バス会社において処理するとともに、速やかに代替運送の方法を講じる等、博覧会協会の運営に支障をきたさないようにしなければならない。

(4)博覧会協会は、バス会社に対して貸し切りチャーター料金から車両賃貸等を差し引いた額を支払う。

(5)博覧会協会とバス会社は、輸送需要の変化・契約内容の変更が生じた場合は、その都度双方で協議する。

 このようにして連節バスの運営はなされていたが、開幕の日を迎えいよいよ100台の連節バスが動きだすことになった。

【画像ギャラリー】関東近県31のバス事業者を10グループに分け運営!! 盤石の態勢で開催日を待つ“つくば85スーパーシャトル”(7枚)画像ギャラリー

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