臨時運転士として訓練を続けるバスマガジン記者の奮闘記。約3か月のブランク後に空車教習と営業教習を少しだけやり直して、とうとう訓練生の最後の山場である社内審査試験「見極め」を受けることを通告される。審査の模様を記憶をもとにレポートする。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
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■何も知らされずに審査を受ける?
運行管理者から見極め審査の日程は通告されたが、いったいどんな形式でどの仕業でどれくらいの時間を実施されるのかは一切教えてくれない。本当は教えてくれないのではなくて、運行管理者でさえ知らないというのが正しいようだった。
富士急行の本社から担当者が東京までやってきて、営業教習中のバスに突然乗り込んできて審査していくということだけは分かっていたが、ただそれだけだ。出発点呼の時も特にそれらしい通達や注意事項はなかった。不安で仕方がない。せめて合格基準だけでも……という気持ちがないわけでもない。
当日の朝にジタバタしても仕方がないので、出発準備にとりかかる。仕業は前日の確認の際に知らされていたので、それだけは分かっている。新宿の中心部にあるビルと新宿西口駅とを結ぶシャトルバスである。そして指導運転士は件の萱沼教官である。
■教官も知らないのか?
なるべく情報を得ようと、芝浦の東京営業所から新宿に向かう回送経路の途上で萱沼教官にいろいろと尋ねてみるものの、担当試験官が自分で決めて乗るからどこからとかいつからというのは本当にわからないらしい。
本業が記者なので、普段からインタビューをしてコメントをとるのは得意なはずだが、さすがに知らないことを聞き出すのは無理だ。ただ、審査時間については「20分くらい乗ってるんじゃないのかなぁ?」と有力とも思える情報をつかんだ。
■運行開始だ!
新宿西口から実際の運行をスタートさせる。ダイヤに従い運行するのだが、当日は3名の訓練生が審査を受けるとは聞いていて、うち2名が芝浦周辺の路線バスで審査を受けるとのことだったので、おそらく営業所に近いそちらを先に済ませてから新宿に来るのだろうと萱沼教官も考えたらしく、「お昼からだろうなぁ?」とのたまう。
ということであれば、午前中は変に緊張せずにいつも通りの運行を心がけることにする。いつものように萱沼教官が横について指導をしてくれる。
■どこかで見たような顔が!
午前中の仕業を続けていると、新宿西口の乗降場に知った顔が立っていた。乗客の待機列最後に社員証を提示して乗ってきたのは、以前に山梨での研修でお世話になった方である。え、もう審査始まるの? 午後からじゃなかったの? そう、午後からというのはあくまでも予想であり、確定事項ではなかったのだ。
しかしそんなことで呆然としている場合ではない。乗客はすでに乗り込んでいるので発車させなくてはならない。いつの間にか萱沼教官は試験官と後ろの席で座っている。審査中は指導運転士は横についてアドバイスや注意をすることは許されないのだろう。
それはそうだ。一人で営業運転できるかどうかの見極めなので、いまだに横でアレコレ言っている状態では安心して1台のバスを任せるわけにはいかないだろう。
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