東京都内を走るバス事業者には、大手民鉄が多い。その方向幕の特徴はさまざまだが、実は共通した特徴も見られる。まずはLED化に先鞭を付けた3社を紹介する。
この特集は全3回で東京周辺の主な事業者の方向幕の世界をお伝えする予定だ。
文/写真:高木純一
《東急バス》LED化推進のため早い段階で幕式が全滅!!
東急バスは東京都と神奈川県を走るバス事業者だが、都内の営業所のほうが多いためこちら(東京都内編)で紹介する。
東急バスといえば系統番号の囲いのデザインが特徴的で、円の上と下を切った形のデザインであったが、ローマ字併記の幕になった2000年頃に楕円状のデザインに変わった。ただ神奈川県下の路線に系統番号が付番された際に更新した幕の系統番号は他社でも見られる四角の枠に変わってしまった。
90年前後に「東京急行」表示から「東急」とオリジナルの特注書体で書かれた社名コマに変わり、今でもこの書体表示は続いている。ローマ字併記は前面幕のみで、側面は回送のみローマ字併記、後面のローマ字併記はない。
以前は「回送車」表示だったが2000年頃に「回送」表示になった。また中型車はこのころまで「腰幕」(車体腰部に表示穴を開け表示機を埋め込んだもの)を採用しており、中型車だけは側面幕が小型タイプであった。
東急バスは在来車にも「LED化」を行い、早い段階で方向幕車両が全滅してしまった事業者でもある。表示機は車両メーカーごとに決まっており、いすゞ車のみ羽深式、それ以外がオージ式であった。
なので一部の営業所では羽深式とオージ式の幕が混在していた。それぞれに互換性はなく、検知部分から幕幅まで異なるため流用はできなかった。だがバスに付いている状態ではほとんど見分けがつかないのは共通レイアウトだからだ。
オージ製表示機でも東急コーチ専用車は検知部分の無い「目押し」(運転士が目視で動かす)や箔式表示機を採用するなど表示機は多彩であった。幕は関西のメーカーのものを採用している。
《京浜急行バス》回送や貸切、臨時輸送では社名表示幕を使用
京浜急行バスも神奈川県をメインに展開する事業者だが、東急バスとは方向幕で面白いつながりがあるためこちらでご紹介する。
京浜急行電鉄バス時代では前面大型幕が普及してきた頃に回送コマを無くし、「京浜急行」と書かれた社名表示幕を回送や貸切、臨時輸送などで使用し「営業車かそれ以外」の表示をしていた。
前面・後面は連動するが、側面のみは運転席から目視で上下に動かす方式をとっており、このスタイルは京成鉄バスや江ノ電バスでも採用されていたが2000年までには連動式に改められ、京浜急行バスは01年度車までこの方法が残った。
カラー幕が非常に少なく、羽田管内の幕以外ではカラーベタ幕の存在はないが三崎・衣笠管内には挿絵入りのコマが存在する。
またローマ字併記の幕も少なかったが02年度車は側面も連動になった3点連動式となったため印刷版板を一新し、ローマ字が併記されたものが出現したものの数年で全車両がLED改造されてしまい、見かける機会が少なかった。
神奈川県内の事業者は「深夜バスが緑ベタ幕」が多いが、京浜急行バスのみ深夜バスは通常の白幕にその部分のみ赤文字の深夜バスと表示される。またベタ印刷でない深夜バス表示は神奈川県下では京浜急行バスのみである。
表示機は東急バスと同じようにメーカーごとに決まっており、いすゞ車のみオージ式でそれ以外が羽深式と、なぜが東急バスとまったく逆の選択をしているのは実に興味深い点だ。ただし空港リムジンバスのいすゞ車は台数が少ないからか他車と同じ羽深式を採用している。
高速車両で羽深式を採用している事業者はかなり限られている。幕は関西のメーカーのものを採用している。