34人乗りの[箱根ビュー号]は、トイレ付の超豪華スーパーハイデッカーで、ほかのバスとは明らかに一線を画した存在だった。1990年、大都市からの各地への長距離バスはほぼ開業ラッシュも落ち着き、名古屋から関東の名だたる観光地である箱根までの路線が開業となった。
執筆/写真:石川正臣(バスマガジンvol.80より)
箱根を出発してからの険しい道も三島までは国道を走行した
箱根ビュー号
[伊豆箱根鉄道(現・伊豆箱根バス)/相手会社:ジェイアール東海バス]
箱根関所跡〜三島〜名古屋駅
当時の昼行専用便は贅沢な車両を使用したケースが多かった。「箱根ビュー号」はスーパーハイデッカー、トイレ付きのゆったりとした34人乗りの超豪華バス。
伊豆箱根鉄道(当時)にとっては初の高速路線で、ベテランのジェイアール東海バスとともにどちらのダイヤも名古屋を朝出発し昼に箱根に到着。箱根発は夕方発という1泊2日の箱根の旅として最適なダイヤであった。
秋の行楽シーズン最中の週末、1994年10月に乗車した。名古屋を発車したバスは箱根には昼過ぎに到着。紅葉も美しく、多くの観光者たちでにぎわっていた。
乗降場は立派な関所跡バス停。窓口で予約の旨を伝えると予約台帳があり、即乗車券が販売された。着車したバスは同社が多く保有している観光バスとほぼ同じ外観。「箱根ビュー」のロゴが入り、定期バスや一般貸切バスとは一線を画している仕様であることが実感できた。
定時の15時に4人の観光帰りの乗客を乗せて発車。関所跡を右へ出て芦ノ湖の湖畔に沿って国道1号線を走行。右手の芦ノ湖が見えなくなると静岡県に入る。
高速道の普及で国道を走ることも少なくなったが、この路線はここ東海道を約30分間、連続する坂を下っていく。
夕陽浴びながら三島広小路でもう1人乗車し、三島インターから高速入りする。美しい夕陽を正面に浴びて東名高速道路を西へ。日没となれば外も静かになってくる。車線を変えながら快走する中、左車線に入る際には「左へ曲がります」とアナウンスされるが、左折でないことが不自然に感じられた。
旅の中間地点である浜名湖で15分間休憩。美しい湖面が光っていた。乗客たちの多くが名産ウナギ弁当を購入して夕食としていた。