毎日暑い日が続くが、気温35度と聞いてもおどろかないくらい当たり前になってしまった。ところで高速バスに乗車していると長時間同じ座席で過ごすことになるが、エアコンの効き具合について暑いまたは寒いと感じることはないだろうか。
大きな窓で見晴らしがよいのは結構なのだが、直射日光が差し込むとカーテンを閉めて景色をあきらめることも。それでも「暑い寒い」は個人の感じ方次第なので仕方のないことだが、全長の長いバスにおいて座席によりエアコンの効き具合に差異はあるのだろうか? 現役の高速バス運転士に聞いてみた。
文:古川智規(バスマガジン編集部)
(写真はすべてイメージです)
よくぞ聞いてくれました!
–(記者)高速車だと12mもありますから空調の効き具合に違いはあるのですか?
(運転士)「よく聞いてくれました!それをこの季節だからこそお話ししたかったんですよ。あくまでも私が感じた個人的な意見もありますけど、まずは事実からお話しします。ダブルデッカー車を除いて、多くの国産バスの高速車の場合は空調装置の本体は前から3列目座席付近にあります。これでお分かりですか?」
–つまり本体に近い3列目が最も効きがいいということですか?
「実際にそうなんですよ。冷気はダクトを通して前後に運ばれますけど、空調装置本体から10m近く離れた最後尾座席とでは明らかに違いがあります」
–では暑がりの人は前方に座ればいいということですね?
「基本的にはそうです。私の場合ですが、担当便が自由席だと前方が冷房強めで後方は弱めになる、と実際に案内しています。これは経験上の話ですけど、どうも暑がりの若い男性ほど後方座席に座り、寒がりの女性や高齢者ほど前方に座る傾向にあると感じています。暑がりの方はぜひ3列目に座って試していただきたいくらいです(笑)」
–後ろはエンジンもありますよね?
「高速車はハイデッカーかスーパーハイデッカーであることが多いですので、それほど影響はしませんが確かに最後尾はエアコンから遠い上にエンジン直上 ですから暑いのは確かです。
特に路線車だと最後尾座席の下はすぐエンジンですからね。断熱はしてありますけど暑い夏の日はつらいと思います。都営バスで少し古い車両の最後尾座席に、この座席は暑くなる旨のステッカーが貼ってあり感心した覚えがありますよ(笑)」
–ちなみに車両により違いはあるのですか?
「今ではメーカー純正車体ばかりで仕様書通りに製造して納車されますが、個体による違いは多少なりともありますね。
かつて存在した西日本車体工業では、そういった個体差が生じるのを前提に、完成後の風量をきちんとチェックしていたそうです。吹き出し口のフィンの傾斜を調節して車内が万遍なく冷えるように一台ごとにを調整していたようです。まだ西工車は走っているので、乗る機会があれば気を付けて感じてみてください」