ぐりぐり曲がる複雑な経路
6kmほど国道を走ったのち、知手(しって)南部団地西交差点を左に曲がり、また脇道へとそれる。この付近から路地を駆使して「コ」や「ロ」の字を描くような、非常にトリッキーな経路を辿り始める。
短いながらも急激な上り坂や、行き違いが難しい幅の道を通る区間が盛り込まれ、公共交通機関の経路として見ると、車窓からの風景が趣味的にオイシイというか、ある種の妖艶さすら覚えてしまう。
そういった複雑なルートになっているのは需要があるからこそだろう。鹿島神宮駅から銚子駅まで停留所の数は89箇所。団地・住宅地を縫うように進むのを基軸に、温泉施設や交流施設、病院、診療所、学校など、利用者が見込める場所をくまなくカバーしている。
実際、降りていくお客さんもこの複雑なルート圏内が多く、次第にまた出発時点の少人数に戻った。
鹿島神宮駅から約20km地点の、知手入口〜植松間の約12kmは自由乗降区間になっている。停留所に拘らず、申告すればどこでも乗り降りが可能だ。乗車当日に希望者は乗降ともいなかった。
「海岸線」ではあるけれど
路線名から察するに、海沿いをずっと進む印象がある。実際のところどうかと言えば、海に近い道でも海岸線から900m程度離れており、車窓から海はほとんど見えない。
水のある風景が登場するのは終点の銚子駅が近づいてきた頃。対岸まで距離があり、なかなか迫力ある景色が楽しめるため間違えても仕方ないが、見えるのは海ではなく利根川である。
茨城県側の突端を大きく迂回するようにバスは進み、しばらく利根川沿いを走ると路地へと曲がり、再び登場する国道124号線の銚子大橋で利根川を渡る。いよいよ県境越えだ。
県境越えバスのお約束?
茨城県と千葉県の県境は利根川になっている。銚子大橋の千葉県寄りに県境を示す標識が立っており、そこを過ぎれば茨城県のバス会社の車両が隣県へと乗り入れる待望の瞬間だ。
県境を越えるバスによくあるスタイルとして、他県に入ってすぐ終点、というのが挙げられる。実は銚子大橋から銚子駅までの距離は1.2kmくらいしかなく、関東鉄道の鹿島神宮駅〜銚子駅行き路線もその例の一つ、というわけだ。
千葉県入りして約5分、バスは16:15に銚子駅降車専用バス停に到着した。前側のドアから降車、鹿島神宮からの運賃は1,430円だ。
合計3名が銚子駅まで利用、うち通しで乗ったのは2名。ただしゲスト乗客はノーカウントの法則を適用すると、県境を跨いでバスを使ったのは「ゼロ」だったと思われる。
バスが遅れなかった場合、この先の銚子から東京方面には、最短で16:38発のJR特急列車「しおさい」または16:25発の千葉交通高速バス「利根ライナー号」に連絡可能だ。
もちろん、せっかく銚子まで来たのだから、トンボ返りせず魚くらい食べていきたいと考えるのも大いにアリだ。
【バス路線の基本データ】
関東鉄道 鹿島神宮駅→銚子駅行き
・跨ぐ県:茨城県→千葉県
・移動距離:約49km
・所要時間:1時間50分
・運賃:1,430円
・停留所の数:89カ所
・千葉県内の区間距離:約1.2km
・千葉県内の停留所の数:3カ所
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