バスになっても名鉄ブランド健在!
碧南駅14:30発の吉良吉田駅行きを目当てに駅前まで戻ると、発車時刻の4分前にバスがロータリーに入ってきた。2006年式の三菱ふそうエアロスターだ。
名鉄バスカラーの大型路線車が使われている。これはつまり名鉄バスが鉄道代替路線を管理運行しているのかと言えば、ちょっと事情が絡み合う。
「ふれんどバス」の運営を行うのはあくまでレールバス区間沿線の各自治体で、実際バスを走らせる部分の委託を受けているのが名鉄バス、というカラクリだ。
車体に特別な意匠こそ施されていないが、行き先表示器にはちゃんと「ふれんどバス」が併記される。ふれんどバスの愛称が付いているのは碧南駅〜吉良吉田駅間の路線だけなので、乗り間違える心配は全くない。
民家と農地を抜ける路線
時刻通りの14:30に、3名の利用者を乗せて碧南駅を出発。かつての鉄道路線は、碧南駅を出るとU字カーブを描くように大回りしてから近隣の矢作川を渡っていたが、バスの場合は県道43号線上の矢作川にかかる棚尾橋まで直行する。
碧南駅出発直後を除けば、おおむね鉄道の線路があった近くを通る経路が組まれている。とはいえ完全にトレースするわけではないのと大半の遺構が既に撤去されているため、乗りながら鉄道の面影を探るのはちょっと難しい。
碧南駅から5kmほど進み、県道43号から383号線に移ってすぐの寺津大明神交差点を通過する際、進行方向左側にコンクリート製の高架橋がチラッと見える。
バスから確認できる数少ない鉄道遺構の「寺津高架橋」である。国と自治体都合で大量の税金を投入して建設したものの、6年しか使わなかったため何かと物言いの種になった、ある方面では曰く付きの構造物だ。
利用者の少なさから鉄道が廃止になったとはいえ、相応に人口のあるエリアを結んでおり、車窓からの景色は建ち並ぶ民家や農地が続く。海線と言っても海岸線まで少し距離があり、海はそれほど見えない。
途中の停留所でさらに2名が乗車したが、碧南駅を出て20分くらい進んだ一色高校西バス停に達する頃になると、全ての利用者が降りて誰もいなくなった。
30分ほど乗ってきて、建物と建物の間隔が広くなり農地が目立ってくると、三河線乗りバス旅も終盤に差し掛かる。
この路線バスは同地域を象徴する大きな川を2つ渡る。碧南方面からの「掴み」が矢作川だとすれば、締めくくりは矢作古川だ。川を越えてすぐの15:06に、終点の吉良吉田駅に到着した。
代替バスの移動距離は約15km、所要時間で36分ほど。後払い方式で運賃は200円。レールバス時代の所要時間はおよそ30分、運賃360円であった。
所要時間が若干増えている反面、自治体運営のバスということで運賃が驚くほど低く設定し直されている。交通系ICカードでも支払える。
バスを降りた後は、再び名鉄の別の路線に乗り換えができる。数時間待ち!?のようなホラー展開とも無縁で、名鉄西尾線と蒲郡線どちらも割とスムーズな連絡だ。
私鉄の代替バスに該当する「ふれんどバス」。使えるかどうかの話では、日中なら何も考えずに行っても大丈夫なくらい、ぜんぜん普通に使えた。
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