私鉄廃線代替バスの現状レポート[名鉄三河線・山線区間]はこうなっていた!!

■線路にベッタリ!? な経路

 猿投駅到着時点で既にそれなりの人数が乗っていた。猿投からの利用者を含めて席がほぼ埋まり、さらに出発直前に10人以上の追加乗車があり、立ち席が出るほど混雑した。

 代替バスが100%ガランとしているワケではないのだ。大勢のお客さんを乗せ、14:42の時間通りに猿投駅を出発した。

 発車してすぐ、名鉄三河線の踏切を渡る。この踏切、駅から先の西中金方向に少し延びた線路(引き上げ線)を跨いでいる。回送電車の出し入れにしか使わないハズであるが、一応現役の踏切なのでクルマはちゃんと一時停止する。

 バスは山方面へ向かって走り始める。しばらくして進行方向右側にレールとホームが見えた。紛れもない名鉄三河線末端区間の廃線跡だ。

 鉄道時代の面影があまり残っていない海線とは対照的に、山線のほうは鉄道の遺構がかなり残されている。バスの走行中、鉄のレールが敷かれたままの線路跡と並行する区間まである。

 猿投駅を出て15分くらいで「広瀬」停留所に到着。ここは名鉄線時代の三河広瀬駅があった場所で、当時の木造駅舎が有形登録文化財になっている。

鉄道遺構を活用した広瀬停留所
鉄道遺構を活用した広瀬停留所

 駅跡周辺は観光スポットとしてキレイに整備されている。バス停のスペースが大きく取られていて、駅舎の近くにはトイレもある。バスはここで5分ほど休憩を挟んだ。

■だんだん高いところへ…

 バスはさらに奥へと進んでいく。県道348号、11号、350号、355号線と、国道153号線がバスのルートに設定されている。山へ向かうだけあって、足助方面の道は上り坂だ。

 ただし行程中のアップダウンが結構激しく、坂を上り切ったかと思いきやまた下り、さらに上り下りを繰り返して、徐々に高度を稼いでいく。

 猿投周辺の標高は74mくらいであるが、終点の百年草まで行くと標高154m程度まで上がる。

 広瀬を発車して3分ほど経つと、進行方向左側に突如木造の建物が現れる。西中金駅の駅舎跡だ。こちらも鉄道を偲ぶ施設として整備され、駅舎の待合室ではカフェが営業している。

 両側に山林が広がる、のどかな場所の道路脇にいきなり建っているので、初めて来ると「えっここが終着?」と思ってしまうかも。

 駅舎から60mほど離れた場所に現在のバス停が置かれている。名称は変わらず「西中金」だ。

 バスは道路の最短ルートではなく鉄道跡に近い場所を通る関係で、少し遠回りをする。猿投〜西中金間のバス経路の距離は約9.6km、所要時間26分、運賃は300円だ。

■路線バスの代替バス?

 西中金から先は線路がないので、私鉄の代替バスとしてはここで終わり。ただし鉄道があった頃、西中金〜足助間を名鉄バスの西中金・足助線が結んでいた。

 西中金・足助線は鉄道よりも先の2002年に廃止され、その後コミュニティバスが代わりを担うことになった。今日のさなげ・足助線は、言うなれば路線バスの代替バスでもあるわけだ。

 乗車した日は、西中金から7分くらい・約6km先の「近岡」停留所で下車した。猿投駅から約33分・15.6km、運賃は400円。車内はずっと混雑したままで、ほとんどの利用者が足助まで向かうようだった。

足助周辺は交通量が多めで、休日になると渋滞が起こる場合も
足助周辺は交通量が多めで、休日になると渋滞が起こる場合も

 近岡停留所と、その一つ前の足助追分停留所には、豊田市方面の名鉄バス矢波線と、東岡崎方面の名鉄バス岡崎・足助線のバス停も置かれている。

 足助エリアは有名観光地だけあって、県内の主な鉄道駅からのアクセス手段が用意されている。愛知県外から足助へ向かうなら、猿投発よりも豊田市や東岡崎発のほうが使いやすい。

 また、さなげ・足助線のバスは、足助から更に奥の稲武〜県境を越えた長野県根羽村〜JR飯田線の飯田駅まで到達する、エクストリームなバス旅ルートの最初に使う路線にも変身する。

 ともあれ、スタート地点の猿投駅まで行くのが少し大変かも知れないが、さなげ・足助線は本数が適度にあり、極端に使い辛いバス路線ということもなく、海線のふれんどバスと変わらない利便性と言える。

【画像ギャラリー】人気景勝地へ行く名鉄三河線(山線)代替バス(6枚)画像ギャラリー

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