人やモノにとって避けて通れないのが寿命である。形あるものいつかはその役目を終える時が必ずやってくる。もちろんバスにとってもそうであり、その多くの場合はいつの間にか、ひっそりと引退していくものがほとんどである。ただそんなバスのお別れ会が開かれるということを聞きつけそのバスツアーに参加したので、今回はそちらをお届けする。
文・写真:東出真/編集:古川智規(バスマガジン編集部)
■スペースアローで箱根越え
9月3日の日曜日にやってきたのはツアーの出発地である小田原駅。日曜日ということもあり駅は観光客で混雑していたが、その中を歩いて集合場所へと向かうと既にバスが到着していた。こちらが今日乗車するバス、日産ディーゼル・富士重工のスペースアローである。
どうにも最近よく見かけるタイプとは違うが、それもそのはずで、今回のツアーは「富士重スペースアローで行く!伊豆箱根バスキュービックお別れ会」というバスファンのためのツアーなのだ。
つまり現在各地を走っている貸切バスとは違う、最近は見かけなくなったやや珍しい車両をわざわざ使用したツアーだ。入口で参加者リストの照合を行うと早速車内へと入った。
今回は全席自由席なので、筆者は前方の座席に陣取った。やや集合時間より早めに到着したつもりであったが、そこはさすがのマニアさんたちだ。参加者はすでに座席に座っている状態で予定時間の12時30分に小田原駅を出発した。
出発後にツアーを企画した伊豆箱根バスの担当者から挨拶があり、乗車している富士重スペースアローの21000ccエンジン音をじっくりと楽しんでほしいとのことで道中のアナウンスなどは一切行わず、静かな車内で流れる景色を楽しみながらのスタートとなった。
バスは東海道本線に沿って進むと国道1号線に入り、その後は箱根口から箱根新道へ入り箱根越えになった。
これほどの峠越えでもバスは古さを感じさせず軽やかに、一気に駆け上がっていく。道路自体も非常に快適な状態で渋滞もなく箱根峠を越えていった。天気もよくバスの車窓からは時折富士山も見ることができ、とてもいいドライブになった。
最近は排ガス規制や省燃費のためにエンジンの排気量でパワーをたたき出すことはせずに、ダウンサイジングして新技術やターボで馬力を稼ぐ方式が主流だ。よってこの頃のスペースアローのようにV8エンジン21000ccのモンスターエンジンバスは現在の新車にはないので、昔ながらのパワフルさで軽々と峠越えをするように感じるのは当然と言えば当然なのだ。
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