今日も全国各地を走り回る高速バスは、以前ほどではないにしろ形式や事業者で多くのタイプがある。何度も乗車しているとお気に入りのバスやお気に入りの座席があるのではないだろうか。今回はバスファンに根強い人気の夜行エアロキングに乗車したのでレポートする。
文/写真:東出真
編集:古川智規(バスマガジン編集部)
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■新たにエアロキングで運行だと?
JR名古屋駅のハイウェイバス乗り場にやってきた。時刻は23時前で夜行バスの出発ラッシュ時間帯だ。バス乗り場の画面にはドリーム号が並ぶ。金曜日ということもあり、どの便も満席表示だ。筆者は賑わう待合室を抜けて乗車ホームへと向かう。表示された1番乗り場には大きな二階建てバスが停車している。これが今回乗車する「出雲・松江・米子ドリーム名古屋1号」である。
ところで、時はさかのぼるり7月5日に中国ジェイアールバスは、同路線にダブルデッカー車を導入すると発表した。現在、新車を導入するとなるとスカニアのアストロメガがメインだが、リリースのイラストはどう見ても三菱ふそう製エアロキングだ。この復活劇にバスマニアが狂喜乱舞したのは言うまでもない。というのもエアロキングは2010年に生産が終了しており、現役で活躍する車両はあまりない。
3月には最後まで運用を続けていたジェイアール東海バスのエアロキングが全車引退したのが記憶に新しい。それだけに再び本務運用されるエアロキングに期待が高まった。出雲市発は8月8日から、名古屋発は8月9日から運行が開始された。
■選択座席は階段横の7B
入口で乗車手続きを行い車内に入る。ダブルデッカー車の醍醐味はやはり2階席だ。1階は6席+車いすスペースで、2階は3列シート27席の配置。2階前方の6席は前後の間隔や座席幅の広い「ビジネスシート」である。そして今回は7Bを選択してみた。
マニアの方ならば分かるだろうが、この座席は2階に上がってきてすぐ左手にある座席で、やや特殊な位置である。座席右側は通路だが、左側には座席がなく、やや低めの仕切りがあり、その向こうは階段で吹き抜けという構造だ。後ろは通路なので座席を倒すのに気を使うことはなさそうだ。
■最初で最後の降車休憩
出発時刻となり、バスは動き出した。車内アナウンスのあと名古屋都市高速、東名阪自動車道へと進んでいく。そして40分ほど走ったところで休憩場所である大山田パーキングエリアに到着した。
まだ走り出したばかりという感じもするが、この路線はここが唯一乗客が降車できる休憩場所であるので、外へ出て体を伸ばすには最初で最後だ。多くの乗客が休憩とコンビニでの買い物のために降りていった。駐車場には他の夜行バスが停まっていたが、やはり外から見るとその存在感に圧倒されるダブルデッカー車ならではのものだろう。
■吉なのか凶なのか?
15分ほど停車し、再び西へと走り出した。ここからは乗務員の休憩や交代などで停車するのみで、乗客が降りることはできない。こう書くと窮屈に感じるかも知れないが、走り出すとすぐに消灯なので、時間を気にせず就寝することができる。また休憩のたびに降りていると目が覚めてしまい、なかなか眠れないということもある。その点ではアナウンスを気にする必要がないのはありがたいともいえる。
筆者も寝るための体勢を作りにかかるが、7B席は後ろに座席がないので、フルリクライニングも可能だ。座席周りは通常のシートと同じだが、左側の肘置きにあたる部分がなく階段部のパーツになっているので、腕を置くにはやや違和感がある。飲み物を置けるホルダーもあるが、夜間で倒すといけないので置くにはやや抵抗を感じてしまう。
後ろが気にならないと思ってこの座席を選択してみたが、いざ座ってみるとちょっとしたレイアウトの違いがあり、うまく熟睡という感じにはならなかった。ただそれでも体勢をいろいろ変えているうちに、結局は寝てしまっていたので慣れの問題だろうか。
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