■御礼から始まった研修?
富士急行本社の会議室で始まった研修では、またいろいろ安全運転について言われるんだろうと考えていたのだが、少し予想とは異なる状況だった。最初に言われたのは「1年間、安全運転に努めて勤務してくれたことに対して御礼を申し上げます」だった。いきなりお礼を言われるとは思わなかったが、事故というものは起こそうとして起こすものではないので、軽微であろうが重大であろうが、ないに越したことはない。
とはいえ、絶対安全というのはあり得ないのだから、運転士が安全を守り切ったことに対する会社からの感謝なのだろうと感じた。ちなみに「安全」という言葉はよく使われるが、国際的な定義があり、それは「許容できないリスクがないこと」である。
さて、1年を迎えた7名は所属会社は異なっていてもいわば同期なので、みんな知っている仲間なのだが、1年ぶりに自己紹介をすることになった。ただしムカつくことと、うれしいこと入れ込んで自己紹介し、それに対して全員が付箋で一言添えるというメニューだ。
■富士急バスに移動して実車教習
その後は安全や運転に対する復習のような講義を受けて、富士急バス本社に向かい実車で運転席からの死角についての復習を行う。1年前にやったことなのだが、当時はバスを動かす運転技術だけで手いっぱいで理論的には分かっていても、具体的に理解していなかったことが自分自身で発覚した。
これは素直に申告して、逆に富士急行から「いい話でした。今後の教育や研修の参考になりました」と言われることになった。富士急行が予約していた近くの中華料理店で昼食を取って、最後の研修時間となり実際の事故事例を見てグループ討論を行った。こうして1年を迎えた運転士のフォローアップ研修は終了した。
■最後に読者様が!
東京から山梨までやってきた我々2名の運転士は帰らなければならないので、指定された高速バスに乗るべく富士急ハイランドまで車で送ってもらいバスを待った。河口湖から来るのは分かっていたので、渋滞である程度の遅延はあるので到着まで待つことになった。
ようやくやってきた自社便のバスタ新宿行きの高速バスは、また江戸川営業所の担当だったのだが、最後に乗り込もうと挨拶をすると運転士が記者を見て「あっ!」と声を上げた。何事かとうろたえていると「記事読んでますよ!」と、なんと運転士が読者様だった。「江戸川営業所も取材してくださいよ!」と懇願され、まさかの読者様が運転する高速バスでバスタまで帰り着いた。
この1年間の運転士に対するフォローアップ研修は、記者にとっては非常に有意義であり、1年前より経験値が上がっているだけに、気づきが多く当時とは異なった視点から研修内容を理解することができた。
できることであれば、3年間、5年目と経験値に見合った研修をしてくれるとありがたいとさえ思った。他社の研修は知る立場にはないが、富士急グループの運転士に対する安全教育で一貫しているのは「科学的根拠」だと感じる。客観的な根拠を示して言っていることばかりなので「そんなこと言われてもね~」という疑問を差し挟む余地がない。
それでも事故は起きる。運転士は常に前述した「許容できないリスクがないこと」を目指して運転している。しかし歩行者や自転車を含めた不特定多数が行き交う道路では、だれもが「許容できないリスクがないこと」を意識してくれればなと感じた。バス運転士だけが目指しても、自転車が信号を無視して突っ込んでくればそれは「むちゃくちゃ許容できないリスク」があるということになろう。
それは自動車運転者の「かもしれない運転」である程度は防げるかもしれないが、どちらが良い悪いではなく事故により誰かが傷つくことが不幸なのである。バスを利用するときも降りた後も、許容できないリスクがいっぱいだ。「着席数する」「手すりにつかまる」「降りたらバスの直前直後は歩かない」というリスクを避ける当たり前のことを心にとどめていただきたい。
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