生活交通を担う近距離高速バスの利用者が減少!! その生き残りをかけた取り組みとは!?

■縮小傾向も見せる中・近距離高速バス

 新潟にアクセスする県内高速バスを眺めてみよう。1978年に北陸自動車道が部分開通したのを機に、新潟交通と越後交通が新潟~長岡間を開業したのが最初で、都市間をメインターゲットとしながらも、途中バスストップもクローズなしで乗降できた。

 特急列車なみのスピードに普通車の高速料金よりも安い運賃設定が人気を呼んで、沿線から新潟への利用者も急増したため、当初12往復でのスタートがすぐに増便となっている。

 新潟交通を新潟側事業者に、1980年代には東三条(単独)、柏崎(越後交通と)、燕・弥彦(単独)、高田・直江津(越後・頸城自動車と)、巻(単独)を開業、1990年代に糸魚川(頸城と)、十日町(越後と)、栃尾(越後と)、新飯田(単独)、村松(蒲原鉄道と)、津川・上川(単独)と拡充した。

 1980年代終わりごろからは沿線自治体が高速バスストップに駐車場を設置し、パーク&ライドも進められた。長岡北、巻潟東、鳥原などには数100台規模の利用者用駐車場が整備され、常に200~300台の自家用車が駐車している状況だ。

 しかし2010年代になると、伸びが鈍化してきたのに加えて乗務員不足が影を落とし、新潟交通(新潟交通観光バス移管路線を含む)は長岡、上越、燕・巻潟東インター駐車場、東三条を残して撤退、柏崎と十日町は越後交通、糸魚川は頸城自動車、村松は蒲原鉄道の単独運行に変わった。

 存続した路線も減便が行われ、かろうじて朝の新潟行きは各路線あわせて不便のない程度の便数が確保されているが、日中はかなり縮小され、夕方以降の新潟発もかつての精彩はない。

 そして2018年、越後交通が十日町線から撤退するにあたり、それまで五泉市や新潟市秋葉区などのコミュニティバスを受託していた泉観光バスのグループのアイケー・アライアンスが同路線を継承、2021年10月には新潟交通観光バスの東三条線のうち3往復が同社に移管されている。

 なお、他地域では見られない方式だが、新潟交通が同社のICカードシステム「りゅーと」を県内高速バス運行5社に提供、新潟交通の機器を車両に搭載し事後精算する形で、全路線全便同じ形で「りゅーと」(全国共通ICカードも使用可)が使えるようになっている。

 経営上の適正化のためにはもう少し減便したいところだが、すでにニーズと対応して考えられる減便・廃止は済んでおり、あとは長岡線を数便系統統合・整理できるかどうかだと新潟交通は言う。

 実際、毎日のように利用するパーク&ライド利用者にとっても、これ以上の減便は高速バスからの逸走~マイカー通勤への移行~新潟都市圏の渋滞激化と悪循環への回帰となりかねない。

■“生活路線”の高速バスに地域も注目を

毎朝頻発しているしずてつジャストライン静岡行の県内高速バスに乗り込む通勤通学客(吉田町役場)
毎朝頻発しているしずてつジャストライン静岡行の県内高速バスに乗り込む通勤通学客(吉田町役場)

 バスマガジンvol.111(2022年1月発売)で訪問しているしずてつジャストラインにおいても、牧之原市や御前崎市(浜岡・相良)、吉田町と県都静岡を結ぶ特急バスは、朝は5~10分ごとに静岡に向かって発車する。

 各バス停からは一般路線バスに乗車するかのように発車時刻の少し前に続々と通勤通学利用者がやってきて、列をなしてハイデッカーの車内に吸い込まれていく。

 13列64人乗り車両も、限られた乗務員で乗り残しなく輸送できるようにと開発・投入したものだ。活発な利用は戻っているものの、数字的にはやはりコロナ以降80%程度にとどまっているように聞く。

 これまで、補助対象でもなく、事業者が事業ベースで運営できていた高速バスには、沿線の市町村もほとんど無関心であった。

 筆者の関わる千葉県袖ケ浦市の協議会ではアクアラインの高速バスが市民生活に大きく関わるため、常に協議内容に採り上げられてきたが、他の自治体では市民利用が多くても、高速バスというだけで協議対象には上がってこない。

 しかしコロナ禍で見えてきた今後の動向を考えると、一般路線と同様に“生活路線”として位置づけて、きちんと維持や活性化への議論を地域でする必要があるのではないか。

 広域なので、県が動くべきという意見もあろう。もちろん複数の市町村を貫く路線や県境を越える路線など、都道府県を中心に議論した方がよいケースもあるだろう。

 しかし、たとえば新潟の県内高速バス利用者の相当割合は、合併で広域になった新潟市域の住民。

 仙台~山形間は県境をまたぐが仙台市と山形市しか走っていないこと、三重交通の近距離高速バスの名古屋はあくまで目的地で桑名市や四日市市の団地にニーズがあることなど、むしろ市町村が前に出て議論した方がよさそうなケースも少なくない。

 いよいよのときに補助を出すのか、利用促進に自治体も尽力するのかなど、実際の対応の仕方は議論を経て決めればよい。行政は地域の基幹交通として“生活路線”の高速バスが存在しているということにまず注目し、事業者のためよりも、市民・利用者目線でこれを育てることを考えてほしい。

 そのために事業者も、日常からこれら高速バスがどのように利用されているかを情報発信し、減便などを余儀なくされる場合は早めに地域と情報共有し、双方の信頼関係の下であり方を検討することも必要である。

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