■進む傾向が見えてきた住民理解
新潟市では新潟市が施設と環境の整備を行い、新潟交通が運行確保に責任をもついわゆる“公設民営”方式でBRTを運行しているが、2014年度の開業以降、5年間すべての年度において利用者数、年間走行キロともに計画値を上回り、事業としても安定した実績を積み上げてきた。
ところがコロナ禍の影響により、2020年度のBRTを含む新潟交通の乗合バス利用者数は、前年度比72%に減少、最大の減少幅を見せた5月には54%となった。バス事業の売上高も約30%減少し、減収額は20億円を超えるという。
“公設民営”方式の中で、新潟市と新潟交通は運行事業協定を結んでおり、その中の項目の一つに年間走行キロ数を維持することが示されていた。
開業時の運行事業協定は2019年度末で満了となるが、コロナ禍に突入した直後で改定に向けてのテーブルに着くことも難しかった状況から、いったん延長協定を結び、半年後の2020年10月にコロナ禍の影響を見極める必要もあって2022年度末までの再延長を行った。
このとき、コロナ禍により利用者が大幅に減少し、悪化した経営状況を踏まえて、確認書を締結して協定の一部効力を停止した。それが年間走行キロを維持するという部分である。
つまり経営が悪化した状態で走行キロを維持することに縛られると、事業全体が成り立たなくなる恐れがあり、地域の足の確保は事業者の成立あってのものであるという認識であった。
これにより、新潟交通は2020年11月に利用実態に見合った約12%の減便を行った。BRT開業前に比べて165便の減となる。ドライバー不足の問題もあるものの、幹線・支線の接続や通学時間帯の輸送力確保などからすると、このあたりが限界であろう。
新潟市では市民に向け「新バスシステム改善目安箱」を設けて意見を募っている。BRT開業から数年は乗り継ぎに関することを中心に多数の意見があったが、乗り継ぎを含むBRTのシステムが定着し、結果的に利便性が高まって利用が増えたことを背景に、次第に意見・要望は減少していた。
コロナ禍においては減便に対する意見の増加が想定されたが、それに関連する「系統・ダイヤ」に対する意見数には大きな変化はなく、増便要望などは逆に減少している。
贔屓目に見ると、コロナ禍におけるバス利用者の減少が一目瞭然の中、事業の厳しさが市民にも実感できたのではないか。
また新潟市も新潟県も新潟交通も、コロナ禍における情報発信(公共交通のメリット・利活用方法・利用促進・安心感の醸成など)をWEBサイトや動画配信、市報などで積極的に行った。それが理解につながったのも明らかであった。
今後さらに市民理解を進めるための情報発信と、課題整理の上アフターコロナに向けての取り組みを見せていくことがさらなる理解につながるものと考えられる。
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