特殊な環境下に残る“ロング”シート
2000年代以降もロングシート的な内装の車両を運用していた事業者は何社かある。
東急バスの一例では、ラッシュ時にまんべんなく乗車できるよう、車内後寄りをロングシートにして通路と立席スペースを拡大させた車両を一部営業所で扱っていた。
ロングと言っても東急バスのものは2人がけシートを横向きに並べたもので、シートの中よりにも肘掛けが付いていた。乗客側の評判は芳しくなかった(前寄り→最後部→後寄りロングの順に席が埋まる)と記憶している。
デメリットに固執せず、従来からの着席と離席(乗り降り)がしやすい点を活かすため、優先席とその付近に限り横向きシートを取り付けている路線車は今も各地で活躍中だ。
また、路面電車をモチーフにした特別車両の演出としてロングシートを取り付けたものや、通路を荷物置き場に併用できる観点から空港シャトルバスにロングシート車が採用された事例も見られる。
2022年現在、新車で純粋なロングシートの路線車を作れるかといえば……限りなくNOに近い。昔の路線車は床がフラットだったので、前から後ろまで連続した、ホントのロングシートを設置できた。
現在はバリアフリー法の関係で車内に段差があるため、ぶつ切りにした横向きシートを置くことはできるが、きれいに並んだロングシート車となると物理的に不可能である(自家用なら特注できるかも)。
ちなみに、鉄のレールの上を走行する「レールバス」はどうだったかと言えば、路線車とはまたニュアンスが異なるようで、年代に関係なくロングシートだったりクロスシートだったりと、車種や導入線区によってまちまちだ。
鉄道車両の場合、よくロングシートは味気ないと言われる。それに対して路線バスのロングシートは数が少ないだけあって、今や見れば驚きをもって迎えられるほどだ。
同じ公共交通機関の同じ車内設備でも、鉄路か道路かで捉え方がまったく異なるのだから実に面白い。
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