よく新聞の記事やテレビのニュースで「大手民鉄」という言葉を聞く。特に大手民鉄16社に名を連ねる鉄道会社は日本でも有数だ。そのうち1社だけ他とは違う特徴を持つ。バスマガジンの記事なのでもちろんバスに関することだが、何が違うのだろうか。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
■そもそも大手民鉄とは?
大手民鉄16社とは、東武・西武・京成・京王・小田急・東急・京急・東京メトロ・相鉄・名鉄・近鉄・南海・京阪・阪急・阪神・西鉄のことを指す。
居住地から遠く離れていても知らない人はいないほど有名な鉄道会社だ。なおJRグループ旅客6社と貨物1社は国鉄だった経緯から大手民鉄には数えないのが通例だ。
2022年度上期の輸送人員だけを見てみると定期、定期外を含めてダントツのトップは東京メトロの1,069,046千人で、2位の東急490,769千人の倍以上だ。
輸送人員で最も少ないのは西鉄の45,500千人で15位の相鉄98,926千人の半分である。基本的には人口の多い関東全体で多く、関西全体ではその4分の1弱なのは仕方のないことだ。
■そのうち1社だけがなぜか違う構造!?
今や鉄道会社は鉄道の収入だけでは成り立たないので、その立地や不動産開発力を生かして鉄道または軌道による事業収入の他に、その他の事業による収入が占める割合は大きい。
そしてもう一つ、鉄道会社が運営していた自動車事業がある。現在では大手16社のうち、西日本鉄道だけが自動車事業の一部(福岡市内とその周辺のみ)を直営で行っている。
すべてのバス事業を分社化して鉄道会社と切り離した他の鉄道会社とはここが異なる。さらに分社化したバス事業会社をさらに地域ごとに分割する例もあり、一部でも直営で営む西鉄は現在においては特異な存在だ。
■そもそもなぜ分社化をしたのか?
鉄道会社がバス事業を分社化したのには理由がある。各社ごとに事情は異なるものの一般論で述べると、1台(編成)に乗せられる乗客の数が違いすぎることから、バスは人件費の割合が特に大きく利益が出にくい構造になっており、同じ会社で鉄道もバスも同じ賃金体系だと会社全体として利益が出なくなる傾向にあった。
そこで違う会社にしてしまえば賃金体系を鉄道とバスとで変えることができ、事実上バス会社の賃金を抑えることができ、会社として収益が出やすくなる、あるいは鉄道事業を圧迫しないことを期待した。
また利益が出にくいバス会社は節税することができ、それもグループ全体として効率を図るのに寄与した。
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