■難しい時代だからこそフレキシブルに?
なにかと制約の多いバスの共同運行であるが、近年は走らせれば儲かるようなバス路線は鳴りを潜め、むしろ会社間を跨いで協力関係を作らないと、存続すら難しいバス路線が目立つようになってきた。
そんな事情を汲み取りつつ、令和の時代に入ってから共同運行の規定が一部改正され、国土交通省の認可を受ければ前述の「やっちゃダメなこと」のうち、事業者同士だけでの擦り合わせと、運行回数に応じた収入の分配ができるようになった。
既存の利用者の数をもとにした収入分配では、超ローカル路線の場合、待てど暮らせど収入がまったく得られず廃線の危機を迎えてしまうため、改正後の条文では他の路線で得た利益を均等に分配させて赤字を補填する狙いがあるようだ。
その他にも、これまでは乗り換えごとに個別に支払っていた運賃を「通し運賃」に変更したり、バス同士だけでなく他種の公共交通機関とも連携できるようになるなど、より柔軟性が高くなった。
ただし、改正後の認可を受けるには、共同運行(共同経営)を始めたい地域のバス路線の中に赤字路線が含まれていることが条件になっている。
最近は全国のバス路線のうち8割以上が赤字と言われており、条件クリアもそう難しくないのが実情か…。
慢性的なバス乗務員不足に悩まされている昨今、ある程度の本数を確保したい時に共同運行・共同経営の形態を採れば、1社単独運行に比べ頭数を揃えるのが容易になるため、今や有効な手段の一つになっている。共同運行によって運行コストの削減も可能だ。
また、利用者にとって分かりやすいダイヤが作れるのも、共同運行のメリットの一つだ。例えば競合関係にあるC社とD社があったとする。
C社のバスもD社のバスも、同じ停留所を同じ時刻に発車して、どちらのバスも次はあと3時間来ない……のような、利用者そっちのけの状況が競合の場合は普通に生まれる。
これを共同運行・共同経営にすれば、これまで偏るにも程がありすぎたバスの発着時刻を、1時間に1本のように均して設定できるようになり、結果利便性も格段に高くなるわけだ。
各バス事業者における近頃の台所事情を鑑みると、「みんなで手を繋いで一緒にゴール」も、なかなか的を射たソリューションなのかもしれない。
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