羽田空港拡大時期に古都鎌倉玄関口に大船、湘南エリア拠点の藤沢へ早くも路線開業。今では全国、いや世界各国からの利用者も利用する路線となった江ノ電バス。
羽田空港を降り立つと関東各地へのアクセスに多くのバスが発着している。ハイデッカー車両が即高速道へ、しかしこの路線だけはスタンダードデッカーが使用されている。
●羽田空港〜大船・藤沢線
運行:江ノ電バス/京浜急行バス(相手会社)
乗車・撮影:2016年(一部2018年)
(記事の内容は、2023年7月現在のものです)
執筆・写真/石川正臣
※2023年7月発売《バスマガジンvol.120》『思い出の長距離バス』より
■江ノ電の名は海外からの旅客にも愛されて世界的になった
江ノ島〜鎌倉エリアのシンボルともいえる鉄道、江ノ電。そのバス部門と言える江ノ電バスエリアは、東は横浜市、西は神奈川県を代表する観光地、古都鎌倉、美しい相模湾、江ノ島、湘南地区、その近辺の高級住宅地に路線網を持つ。
バブル期の夜行中心の路線拡大時期に横浜発着路線には、同業三社に任せ自らは自社路線に力を注いでいた。しかし羽田空港拡張後にエリア、大船、藤沢へと初の高速道経由の路線が登場したが、相手会社京浜急行バス(京急)にとっては早くから開業し、今では盛況路線と成長している。
しかし車両は共通ではなく、ハイデッカーよりも両社ともに屋根を低くしたサイズが準備され、京急にとっては藤沢線専用車であった。それはJR横須賀線をくぐるガードが低かったためで、ここを通行する必要があるためのものであった。
空港発の路線は数多く各主要都市へ、藤沢の文字だけがリゾート気分の印象があった。
車体にはラッピングのある派手なバスが近づいたが、停車前にテンポの速いチャイム音が鳴り江ノ電バスであることが実感。同社は1980年代になってウィンカーアラームを路線車にも貸切観光車にもかなり早くから即採用されていた。
■スタンダードデッカーが製造中止!? しかし新陸橋が……
羽田を出発すると長いトンネルで神奈川県に入り、鶴見つばさ橋、横浜ベイブリッジとベイエリアの海を眺めつつ内陸へ、横浜らしい丘陵地をバスから眺め、日野インターで高速降りると鎌倉街道を南下する。観音様が優しく見つめる鎌倉市の玄関口大船駅、半数が降りて行った。
そしてここがエリア目玉のガード。ここをゆっくりとくぐる。すれ違う市内線路線バス見るとなんてこともないが、こちらは速度をかなり落として通行した。鎌倉市の神社仏閣とは裏腹に内陸を西へ藤沢市に、青き海の眺めはなく交通量多き神奈川県らしい印象の中、藤沢駅に到着。
わずかな車高の差でトランクルームは狭く、時間帯によれば荷物を入れるのにもかなり奥から詰め込まないと入りきらない、とポーターさんから苦労が話を聞いたこともあった。
その後メーカーでは高速車両のスタンダードデッカーは製造中止、路線維持に制約が発生し今後の動向が気になった。
運が良いのか約300メートル南に陸橋が完成し問題は一件落着。江ノ電バスではその後このマリンリゾート地と古都鎌倉を生かし、大阪への夜行、そして横浜発着へも夜行便の運行をはじめたが数年間で撤退、長距離便は老舗のこの羽田空港一路線のみとしている。
いまでは屋根が低かったあの頃は思い出となり、今日も多くのお客様を乗せて走り地元客の他、行楽客も乗せて快走している。
※撮影乗車が2016年から2018年にまたがっているため会社名は現在のものに統一、当時の運行事業者は江ノ電バス藤沢。
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