■鉄道扱いのバスが走る!!
鉄道が通れなくなった区間には代わりの交通手段が必要となる。大抵のケースではバスが使われるが、日高本線でもまた、2015年1月13日から列車代行バスが立てられた。
時系列ごとに鉄道の不通区間が異なっていた関係で、バスも列車の運行状況に合わせて走行区間を調整していたが、最終的には鵡川〜様似間116kmを代行バスが担うことになった。
バス代行の開始直後は朝と夕方にしか便の設定がなく、極端に利用の難しい路線へと変貌した感が強かった。しかし沿線周辺のバス事業者との折り合いがつくと増便が決まり、後年は観光でも利用しやすくなった。
2018年時点で、苫小牧〜鵡川〜様似間を通しで移動できるチャンスは1日4回ほどあり、代行バスは途中の静内駅で乗り換えが必要になるダイヤが組まれていた。所要時間は合計4時間半くらいと、鉄道時代よりバスのほうが長くなった。
乗り換えこそ必要だったものの、形式上はあくまで苫小牧〜様似を結ぶ1本の列車だったようだ。
例えば鉄道の折り返し地点となった鵡川駅で代行バスに接続、その後静内でもバスに乗り継げる便の行き先を、苫小牧駅ホームの電光掲示板で見ると「様似」と表示されていた。
また、代行バスは鉄道扱いということで、バスの部分だけ利用する場合も、通常のJR日高本線の切符が原則必要だった。
ちなみに途中の静内駅では、代行バスになった後も駅入場券の発売を行なっており、絶対に車両の来ない“現役”鉄道施設(ホーム)に入れるという、すごく不思議な体験もできた。
■どれが来るか分からない楽しさ
列車代行バスの運行は、鵡川〜静内間が沿線周辺で貸切バスなどを運行している各事業者、静内〜様似間はジェイアール北海道バスが委託を受けて担当していた。
鵡川〜静内間の代行バスは複数の事業者が受け持っていたため、バスの種類がバラエティに富んでいた。トップドア車やハイデッカー車、車内に歌謡曲が流れる観光サロン的なクルマetc……どれが来るかわからない闇鍋的な楽しみがあったと言える。
一方のジェイアール北海道バスの受け持ち区間には、青と白のJRバスカラーに塗られた、一般路線バスと変わらない見た目の「路線車」が使われていた。ただし車両をよくよく見てみると、貸切バス向けに登録された路線バス車両が充当されていたのに気付く。
列車代行バスは営業運行をする通常の路線バスとは異なるため、法律面での兼ね合いなど、乗合バス用として登録された車両は原則使えない事情があるのかも知れない。
■6年続いた列車代行バスの時代
日高本線の鵡川〜様似間が廃止になったのは2021年4月1日のこと。鉄道線の廃止に合わせて列車代行バスも役割を全うした。2015年1月の災害不通以降、約6年間にわたって列車代行バスが走っていたことになる。
鉄道が停まる駅にしか立ち寄らず、バスとしては走行距離の割に停車ポイントの数が凄く少なかったり、バスが駅前に乗り付けられない場所には専用のバス停が道路沿いに立てられたり……
……この6年間のうち列車代行バスならではの特色が随所に見られたのも、今となっては貴重な思い出に変わった。
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