名前は知っていたけれど……「木炭車」(代燃車)って一体どんなクルマだった?

■やっぱりデメリットだらけ?

 昭和10年代に普通乗用車やトラック、バスなど、あらゆる自動車が木炭ガス仕様への転身を図った。

 ガソリンよりも燃料代が安く上がる、既存の内燃機関が使える、燃料補給が容易、ガソリンを全く使わずに済むので国に貢献といった、木炭車にも一応のメリットは掲げられていた。

刺激的なキャッチコピーが目を引く木炭車の広告 「国産自動車商品案内(1940)」より
刺激的なキャッチコピーが目を引く木炭車の広告 「国産自動車商品案内(1940)」より

 その反面、始動に時間(5〜10分)がかかる、加速しない、スピードが出ない、坂を登れない、手入れが大変、扱う度に服が汚れる、一酸化炭素中毒、外付けのガス発生装置が巨大でクルマがカッコ悪くなるなど、デメリットの方は実用面に影響するものばかりだ。

 1939年刊『代用燃料車の総括的研究』に掲載された、各バス事業者の木炭車使用報告を見ると、「坂道で苦労する」、「うちは扱いに困っている」……

……「好きだろうと嫌いだろうと(国策で)絶対使わないといけない」など、さんざんな言われ方が目立つ。しかも、言論に自由を求めすぎると逮捕されてしまう時代ゆえ、これでも控えめな気がする。

 ちなみに、木炭車の燃費はどれくらいだったのか、当時の統計データによれば、バス車両の場合は平均値で木炭1kgあたり2kmくらい走行できたようだ。

 燃料代はガソリンの半分程度で済むとの記述もあるが、ガス発生装置の購入費や改造費を含めて減価償却していくと、ガソリン車とほとんど運用コストが変わらなかったらしい。

■世界で頑張った木炭車

 日本では1930〜40年代にガソリン車の代わりとなって、日本全国で木炭車が広く使われたが、木炭車=日本だけのガラパゴスなクルマ、でもないようだ。

 第二次大戦中、少なくともドイツ、スウェーデン、フランス、デンマーク、スイス、オランダ、フィンランドなどで、木炭仕様に改装したクルマが、路線バスや自家用車に結構使われていたらしい。民間におけるガソリン不足はどこの国も同じだったわけだ。

1943頃撮影された、木炭車に改装したオランダの路線バス(写真:パブリックドメイン)
1943頃撮影された、木炭車に改装したオランダの路線バス(写真:パブリックドメイン)

 日本の場合、戦後しらばくの間は石油系燃料が慢性的に不足しており、当時実用化にこぎ付けていた電気自動車と合わせて、木炭車は引き続き日常の足を担った。木炭バスが最終的に廃止されたのは1951年と言われている。

 現在もレストアされた木炭バスが各地に何台か現存している。自動車用としては既にほとんど使われなくなった技術ゆえ、今や木炭車の存在感は好奇中の好奇に映る。

【画像ギャラリー】坂道だけはカンベンな……いにしえの木炭バス!!(7枚)画像ギャラリー

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