小田急線の新宿〜町田間は交通の大動脈であるが、電車移動が当たり前。朝から晩まで絶え間なく電車が往来しているとなれば、それを補完する路線バスも通っていて、町田から新宿までバスだけでも行けそうな気がしてくる。果たしてそれは本当か!?
文・写真:中山修一
(関連写真付き記事はバスマガジンWEBもしくはベストカーWEBをご覧ください)
■今日も小田急線が往く
限りなく神奈川県に迫る東京の町田と、日本を代表する大都市・新宿。直線距離で30kmほど離れた位置関係にあるこれら2つの街を、100年近く前から鉄道路線の小田急線が結んでいる。
利用者数1位の揺るぎない座をキープし続ける新宿に次いで、町田は2位。新宿〜町田間は小田急線の中でも特に輸送人員が多い。
そのため電車の本数も、普通から快速急行まで含めると数分おきの高頻度になり、別料金が必要な特急ロマンスカーに至っても通勤利用の人気が高く、夜遅くまでガンガン来る。
しかし、ここでふと素朴な疑問がわいた。新宿→町田(またはその逆)を移動する手段に選ぶのはいつも電車。
バスを使って行くなんて発想は一度も浮かんだことがない。そもそも、新宿と町田を結ぶバスなんて出ているのだろうか?
■電車を使わず新宿へ
今回は、より大きい方をゴール地点に据えて、町田→新宿間をバスだけで移動できるか、手始めにリサーチから始めてみることにした。例によって高速バスと空港連絡バスは対象外、使って良いのは一般路線バス+徒歩だ。
電車の利用者数と列車本数の多さを見ると、系列のバス会社・この場合小田急バスが、駅と駅の間の交通手段を補完する目的で、線路と並行して進む路線バスを運行していそうなイメージを何となく抱く。
さすがに町田〜新宿を通しで結ぶバスを期待するのは高望みが過ぎるとはいえ、途中の小田急線の駅同士を繋ぐバスが出ていて、それらを乗り継げば無理なく新宿まで行けそうな気もしてくる。
はてさて、思い通りの交通ネットワークが実在するのか。その答えは、小田急の町田駅下にある町田バスセンターの時刻表にある。
■スタート地点でつまずく
果たして結果は……知っている人なら察しが付くだろうが、まず第一に、町田駅周辺に小田急バスは来ない、という現実が立ちはだかる。
町田駅を出入りするのは神奈中バスのみ。神奈中も小田急グループではあるものの、東京の都心部までは基本的にカバーしていないバス会社ゆえに、一歩踏み出さない段階で雲行きが怪しくなってきた。
さらにリサーチを進めていくと、意外な現状に気づいた。バスでは小田急線沿線に沿って、とにかく真っ直ぐ進めないのだ。
しかも中継地点をちょっとでも誤ると、先が繋がらなくなり即終了。「そんなのバスで来るな」と言わんばかりの拒みっぷりに舌を巻いた。
■やっぱり“アレ”が難題に
まっすぐ進むのは不可能だと判断せざるを得ない。そうなると迂回ルートを発掘することになるが、町田→新宿を目指そうとなると、位置の関係で都県境を2回跨ぐ必要がある。
一般路線バスと県境、日本全国どこでも今や非常に相性のよろしくない組み合わせであり、いかにして県境を越えるかが切実な問題として付いて回る。それが東京だろうと大して変わらない。
町田市と神奈川県周辺の境界はちょっと特殊なため、まだバスが充実しているほうと言える。簡単そうに見えて超絶に難しいのが、都県境が引かれている多摩川の攻略だ。
多摩川を渡ってくれる路線バスの極端な少なさは折り紙付き。全くないわけでもないが、毎日それなりの本数が出ているバスは物凄く珍しい。
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