■ついに軌陸両用の時代が来た!!
一石二鳥を目論むも、二兎を追う者は……の憂き目に遭うばかりの軌陸両用車であったが、JR北海道が導入を断念したDMVが、別の場所で脚光を浴びることになった。
DMVに白羽の矢が立った舞台は、四国の徳島県にある第三セクターの「阿佐海岸鉄道」。徳島県南部の海部駅〜高知県の甲浦駅を結ぶ延長8.5kmの路線で、それまでは通常のディーゼルカーが使われていた。
立地上の制約から利用者が極端に少なく、厳しい経営を強いられていた中、利用者の低迷を食い止め持続していける性質を持ちつつ、コストの圧縮ができ経営の改善が見込める乗り物として、選ばれたのがDMVだった。
■実用化に至った超ミラクルな条件
阿佐海岸鉄道には、JR北海道が研究していたものとほぼ同じ仕組みのDMVが採用されている。DMVは車体が軽いため、そのままでは信号システムが反応しなかったり、ポイント通過時に脱線しやすいなど、通常の鉄道車両では起こらない問題点がある。
この時点でDMV導入のハードルは極めて高いと言える。ところが阿佐海岸鉄道線は末端にある路線で、他社の列車乗り入れを行わず、DMVだけが通れる線路システムに仕立て直しが可能だったため、特に対応が困難なインフラの問題をクリアできた。
また、マイクロバスがベースになっている関係で定員が20名程度しかなく、大量輸送には全く不向きである弱点も、普段の利用者が少なく、朝夕の通勤通学需要もあまりなかったことから、こちらもクリアした。
さらに、国が求めるDMV運行の条件の一つ「線路上で行き違いをしないこと」も、単線ながら8.5kmの短い路線だったのが幸いして、ダイヤ次第で線路上での行き違いは不要となり、万事クリアとなった。
DMVを走らせるには大きな制約がある中で、阿佐海岸鉄道には全部クリアできる条件が見事なまでに揃っており、実現に至ったのはまさにミラクルと言える。
その後テストを重ね、2021年12月25日に、阿佐海岸鉄道のDMVは「世界初」の乗り物として、晴れて本格営業運転を始めた。道路と線路どちらも走れる乗り物の発想が生まれて、90年以上が経ってからの本格実用化であった。
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