■その鉄道会社でも…
そのようなビジネスモデルで赤字のバス会社を切り離し、人件費を抑えながら発展してきた鉄道だが、当の鉄道従事者も人手不足に見舞われ始めている。バスやトラックの人手不足があまりにも顕著で鉄道にまで話題が及びにくいが、国土交通省の調査によると地方鉄道のうち約半数の事業者が運転士不足と回答している。
実は鉄道会社も深刻であることがうかがえる。その理由は概ねバスと同じで、長時間拘束によるシフト制と待遇の悪さだ。これが主な要因で、まずは若い運転士が離職していく。
そして待遇が伸びないことでベテランの域に達する技術者の離職が目立ち始めると、安全という最も大切な部分の技術継承ができなくなる。昨今の鉄道会社で発覚した数々の不正がこれに起因するものかどうかは別としても、現実に危険な領域に達しているのは事実だ。
■まわりまわって…もう分社化は無理
人件費を抑えるためにあえて待遇悪化の道を選択して分社化した電鉄系バス会社だが、当の鉄道事業でもバス分門と同じ線路を走っているのは皮肉なことだ。鉄道会社は本家中の本家なので分社化することはできず、これ以上の人手不足には減便しか取る手立てはない。
そうして不便になると人は住まなくなり、地価は下がり沿線の価値や魅力が下がり、他に付加価値がない限りは、転げ落ちるように衰退していくのが目に見える。
結局、まわりまわって鉄道事業者まで同じ轍を踏んでいるのは非常に危険なことだ。大手私鉄の中でバス部門を一部でも直営で持っているのは現在ではわずか1社しかない。どこかで負の連鎖を断ち切らなければバスはもちろん鉄道事業も危ういということなのだろうか。
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