お城といえば観光地率が極めて高いゆえ、アクセス至便のために最寄のバス停はどこも「○○城前」なのかと思いきや、むしろ極・少数派だったのが実情。「○○城前」への期待はこのさい捨てちまうことして、猛暑抜け切らぬ9月の終わりに様子を見に行ったのは、福岡県北九州市の小倉城。
文・写真:中山修一
(小倉城とその周辺バス停の写真付き記事はバスマガジンWebもしくはベストカーWebをご覧ください)
■交通の要衝を治めた城
小倉城のルーツは戦国時代の1569年、毛利氏によって築かれた城が始まりと言われている。その後、1600年に勃発した関ヶ原の戦いで多大な貢献をした武将・細川忠興が入国すると城の規模を拡大、1602年の着工から約7年後に完成したとされる。
元々小倉は陸と海の交通の要衝であったが、時代が経つにつれて、ますます重要な役割を担うようになり、城とともに城下も繁栄していった。
ところが1837年に城内で火災が発生した際に天守を含めて建物が全焼。天守は再建されないまま明治を迎え、城としての役割を終えた。
現在の小倉城には立派な天守があり、こちらは1959年に鉄筋コンクリート造りで再建されたもの。5階建で、4階に比べ5階のほうが大きい寸法で作られている(頭でっかち)のが特徴だ。
■朝メシ後のバス停チェック
そんな小倉城のある公園の周りには、車が通れる道が隣接している。小倉に泊まった翌日、ホテルから歩いていける手頃な距離感も手伝って、朝の食後の散歩がてら、城周辺のバス停の様子を見に行った。
JR小倉駅から小倉城まで約1km。小倉駅も城の最寄といえば最寄ながら、もっと近くにバス停くらいはあるだろうと思い、小倉城の天守が進行方向右側に来るようにしつつ、片側2車線の脇にある歩道を進んでいくと、さっそくバス停らしき設備が見えてきた。
ガラスを多用した大型広告つきの、現代的なデザインをしたバス停の上屋に目をやると、バスのピクトグラムと名称が掲示されており、そこには「北九州市役所」と書かれていた。西鉄バス北九州の停留所だ。
お城の近くに市役所と名の付くバス停が置かれているパターンは、「○○城前」よりも遥かに多く、全国的に見ても定番に近いほど頻度が高いと思われる。
■その先に見えてきたものは……?
最初のバス停は城前ではなかった。やっぱり小倉城もノーカウントか、とはいえ和歌山城のように「市役所前」の隣のバス停が「和歌山城前」になっている事例も見られるので、まだ可能性はゼロじゃないと城の外周に沿ってユルユル歩く。
北九州市役所バス停から300m先の交差点を右に曲がって暫く進むと、また同じデザインのバス停が見えてきた。きっと公園前か何かかな? とバス停名に注目すると……
……「小倉城・松本清張記念館前」。お、これはもしや!? どうやら小倉城と、その隣にある松本清張記念館のほぼ中間地点にバス停が置かれている関係で、この名称が付いているらしい。
2施設の連名ではあるが、注目すべきは小倉城と松本清張記念館の間にナカグロ(・)が入っている点。とどのつまりこのバス停は「小倉城前」であり「松本清張記念館前」でもある、と解釈できる。
やったぞ、これはもう○○城前にカウントしてしまおう。小倉城は全国でも実は珍しい「○○城前」バス停を擁する城跡だった!!
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