川崎市内の幼稚園の園バスに運転士を派遣する会社が運転士不足を理由に派遣打ち切りを通告したニュースが駆け巡り関係者が動揺した問題で、園バスの運行にはめどが立ったようで新年度は一件落着になった。しかし、根本的な問題は解決できておらず、依然として不安は続く。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
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■リタイヤ後の仕事としか見られていない
幼稚園バスの運転手は、基本的に朝の登園時と帰宅時の2回しか運行がなく、昼間の園バスは「運休」状態だ。車両は運休でもいいが、人(運転手)も運休となるのでフルタイムでの雇用は難しい。
よって時給によるパートタイムの雇用になるのだろうが、1日数時間の勤務では正業として成り立つものではなく、定年後の年金を補うバイトととらえられる向きがある。よってなり手が少なく、件の別の専門会社が雇用する運転手を派遣するという業態が成り立つのだろう。
規模が大きい幼稚園だと、園バス運行時間以外は用務員として園の庶務や作業を引き受けてもらう形でフルタイムで雇用するケースもあるが、全国的にはまれだろう。
また少子化傾向を反映して園バスの運行路線を多様化し、以前のように多くの園児が乗れるマイクロバスで数便を運行するのはなく、ワンボックスカーを複数台で何往復もさせる形態に変化してきている。よって大型免許が必ずしも必要でない園バスが多くなっているのも最近の特徴だ。
■路線バスとは異なる雇用問題
結局は路線バスとは異なる雇用時間や形態の問題で、なり手がいないということになり、バス事業者と同様に困った事態に陥っている。
園バスの運転手は男性、幼稚園教諭は女性の専売特許ではないが、幼稚園教諭が兼任するものでもなく、そもそも幼稚園の先生は教員免状が必要なので大型運転免許のように「必要になったから取りに行く」という類のものではない。
やはり専門の運転手は必要であり、その雇用や形態を考えなければ退職後の仕事という土台でしか語れなくなり幼稚園は今後、常に園バスの運行問題と向き合わなければならなくなる。
■ボランティアに頼るのも困りもの
ごくまれなケースとしては、園児の保護者が大型免許を持っていてボランティア的に園バスの運転を買って出てくれるケースもある。
もちろん幼稚園は経費を支払っているのだろうが、あくまでも自分の子弟が通う幼稚園だからボランティアで運転しているのであって、卒園した後も運転してくれる保証はない。
さまざまなケースがあるだろうが、やはり生業として成り立つ仕組みや方策が必要だろう。最も良いのは沿線のバス会社に十分な運転士がいて、スクールバスをバスごと貸切運行してもらうことに尽きる。
それには結局のところ、バス運転士不足問題に帰結するので、住民の足が奪われ、園児の通園が不可能になる前に、国や地方公共団体が何らかの総合的な手を打つ必要があるだろう。
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