自動車用バッテリーの電圧は昔から乗用車=12V、バス/トラック=24Vって決まってるの?

■どうしてディーゼルは24Vなの?

 ところで、なぜディーゼル車は24Vと、ガソリンエンジンの普通乗用車とは違う規格が使われているのか。もしかして、古い時代のディーゼル車は電圧が異なっていたのだろうか?

 世界で始めてディーゼルエンジン付きのトラックが実用化したのは1920年代のドイツ。日本でも研究は早い段階から進んでいたようで、1940年代に入ると国産品が自動車カタログのオプション装備として掲載されている。

 その時代の日本製ディーゼルエンジンのスペックに目を通すと、エンジン始動用に24Vのセルモーターが付いているのが見て取れる。日本製に限って言うなら、ディーゼルエンジンは最初から24Vだったらしい。

1940年代のカタログに掲載されている、いすゞ製ディーゼルエンジン(『自動車総覧2600』より)
1940年代のカタログに掲載されている、いすゞ製ディーゼルエンジン(『自動車総覧2600』より)

 同じくらいの年代に日本で(一応)販売されていたガソリン車のスペックに注目すると、輸入車/国産車ともに普通乗用車は6Vが標準。国産車での6Vという単位は、欧米での自動車用バッテリーの工業規格を参考に、輸入車に合わせていたと思われる。

1935年式キャデラック。大昔の乗用車のバッテリーは6Vが多かった(『自動車ハンドブック1935』より)
1935年式キャデラック。大昔の乗用車のバッテリーは6Vが多かった(『自動車ハンドブック1935』より)

 この頃はトラック/バスもガソリン車が主流であったが、そちらには12V仕様がポツポツ見られる。これはどうやらエンジンの大きさが関係しているようだ。

 当時のトラック/バス用のエンジンは、ガソリンでも普通乗用車用に比べて出力が大きい。大きなエンジンは圧縮比が高くなるため、その分だけ始動時にクランクを回すのが重くなる。

 通常の6Vモーターでは回転力(トルク)が足りずクランクがうまく回ってくれないため、より電気を食う代わりにトルクの強い12Vモーターで対策を取っていたのだろう。

ガソリンエンジン搭載で12Vタイプのバッテリーを乗せた戦前のバス車両(『自動車ハンドブック1935』より)
ガソリンエンジン搭載で12Vタイプのバッテリーを乗せた戦前のバス車両(『自動車ハンドブック1935』より)

 6Vが主流であった普通乗用車も、自動車が高性能・高機能化してくると6Vでは力不足になり、だんだん12Vへと軸足を移していった印象が強い。

 また、ディーゼルエンジンも理屈が似ていて、ディーゼルはガソリンエンジンよりも更に圧縮比が高く、始動時にクランクを回すためにはより強力なモーターが必要になる。そこで採用されたのが24Vの規格だ。

 1942年に発刊された雑誌「汎自動車 技術資料篇(自動車資料社)」によれば、12Vでディーゼルエンジンの始動装置を作るよりも、24Vタイプのほうが装置自体を小型軽量化できる、というメリットもあったとされる。

■誰が決めたか24V!?

 ちなみに、24Vでなければいけない根拠はどこから生まれたのかを記した文献を探してみたが、全く見つからなかった(24V規格を量産品で広めたのは恐らくボッシュ)。これといった記録がない、ということは元々具体的な答えが存在しない、とも言える。

 ディーゼルエンジン誕生時に、厳密な計算式によって「24V」でないとダメな、非の打ち所がない確たる答えを導き出すのに成功したので論文で発表、のような経緯は一切ないのかも。

 ことによると製品開発の現場レベルで「12Vの倍にしとけば動くんじゃね?」くらいの単純な理由で24Vになった、あるいは12Vの次に強い規格品のモーターが当時24Vしかなかった、のような可能性もゼロとは言いきれなさそうだ。

 日本の場合、戦前に海外製ディーゼルエンジンを見よう見まねでコピーした際、“献体”にされたのが24Vタイプだったため、素直に真似てそのまま24Vが定着した、とも想像できる。

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