自動車は、ガソリンや軽油を燃やす内燃エンジンで走るタイプであっても、電気の力を頼りにしないと動かない仕組みになっているものがほとんどだ。
文・写真:中山修一
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■クルマと電気の密接な関係
最近のガソリン車やディーゼル車にはバッテリーが当たり前のように積まれている。車を走らせるための燃料があるのに、どうしてバッテリーも必要になるのか。
ヘッド/テールランプ類やカーオーディオといった、アクセサリー類のパワーソースが大抵は電気なので、そういったものを動かす目的もあるが、大元まで遡ると、クルマをより簡単に扱えるようにするための工夫から生まれたものだったのが窺い知れる。
最初に自動車にバッテリーが積まれるようになったのは1920年代。内燃エンジンは自力で起動できない構造になっているのは周知の通り。
起動させるには、まずエンジンを構成するパーツの一つであるクランクを、外部の力を使って強制的に回し、クランクと繋がっているピストンを動かすことで、エンジン本体が内部で燃料を燃やし始める、きっかけを作ってやる必要がある。
ごく初期の自動車は、はじめにクランクを回すプロセスを人力で行っていた。しかしその人力始動は結構な腕力が必要で、車種によっては不注意で大ケガをしてしまう恐れもあり、自動車というものは決して簡単に動かせる道具ではなかったようだ。
もう少し楽に車を動かせないのか? と考えた人は少なからずいたようだ。人の力を使う代わりに電動モーターの回転力でクランクを回してエンジンをかけるアイディア自体は、自動車の黎明期からあったようだが、実用化して普及し始めたのは1920年代のアメリカからだ。
電動モーターを回すには電気が不可欠。しかしその都度モーター用の電気を作っていては手間や時間がかかる上に、専用の装置まで用意する必要が出てきて本末転倒。
決して単純明快とは言えないが面倒でもない、それなりに手堅い方法がバッテリーを積むことだったようで、原理は今も変わらない。
元々はエンジンを始動させる電動モーターを動かすためのバッテリーであったが、次第にそれ以外の機能やアクセサリー等にも、バッテリーの電力が使われるようになった、といったところだ。
■普通車→12V、大型車→24V
電気を表す単位で、特に有名なのが電圧「V ボルト」と電流「A アンペア」。ボルト/アンペアにどのような性質があるのかを、川の流れに例えて表すことがよくある。
それに準えると、ボルトは川を流れる水の速さ、アンペアは川の幅(一度に流れる水の量)のような感じになる。
自動車で使う電気の場合、エンジン始動用の電動モーターに、どれくらい電気を食べさせれば満足に回ってくれるかを基準に何ボルトか(とアンペア数)が決まっている。
最近はガソリンエンジンで動く普通乗用車が12V、トラックなどディーゼルエンジンを積んだ車なら24Vが、ごく一般的な数値になっている。
大型ディーゼル車の路線バスや高速バスはトラックと同じなのかと言えば、電圧自体は24Vでトラックと共通。トラック/バスともに「24V」と言っても、12Vのバッテリーを2つ直列に繋いで24Vを取り出している。
ただし、バス車両は大型クーラーや行先表示器、運賃箱など、電気で動くアクセサリー類を大量に装備している。
そのためカタログ値ではトラック用よりも、電気を貯めておける容量(アンペア)に余裕のあるタイプのバッテリーが推奨されている。搭載しているバッテリーの容量を大きい順に書くと バス>トラック>普通乗用車 になる。
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