一見するとダブルデッカー……でもエアロキングじゃない!? 特別な“QUEEN”を当時のカタログで見る

一見するとダブルデッカー……でもエアロキングじゃない!? 特別な“QUEEN”を当時のカタログで見る

 エアロバスに2代目が登場したのが1992年。バブル景気は実質終焉を迎えていたが、我々のような市井で働く人々には、まだ宴の終わりが実感できない頃だ。そんな頃に登場したのが、時代の終わりを華やかに彩ったエアロクィーンII/IIIだ!!

●今回の車両:三菱自動車/FUSO エアロクィーンII/III U-MS821P

(記事の内容は、2024年3月現在のものです)
執筆/バスマガジン編集部 カタログ提供/難波 有
※2024年3月発売《バスマガジンvol.124》『懐かしバスのお宝カタログ』より

■まさに「クィーン」の風格。こんな優雅なバスは今後現れることはないだろう

バブル景気の恩恵でカタログ制作費がふんだんに注ぎ込まれているのか、大胆に四つ折りで車体全体を見せている。長大で優美な「QUEEN」らしさが際立っている
バブル景気の恩恵でカタログ制作費がふんだんに注ぎ込まれているのか、大胆に四つ折りで車体全体を見せている。長大で優美な「QUEEN」らしさが際立っている

 1992年にエアロバスは観光・高速系がフルモデルチェンジされ、2代目エアロバスが登場した。この2代目、スーパーハイデッカーである「エアロクィーン」には、フロントガラスが1枚のエアロクィーンI、低運転台仕様で上下分割フロントガラスのエアロクィーンIIの2種がラインナップされた。

 そして翌1993年には、運転席の上方までをも床とする客席を持った、セミダブルデッカーのエアロクィーンIIIが登場した。2階建てではないが、それに相当する高さの眺望が特徴で、客室最前列の視界を拡大、開放感のある車内となった。

 いまでは見られないタイプのSDDだが、登場当初から圧倒的な存在感を放ち、全高3540mmのIIに対し3680mmのIII、140mmの差ではあるが、その視覚的な違いは一目瞭然で、乗客に大きな優越感を与えてくれた。

 またその構造上、フロントガラス直後から始まるIII客室内は車内長も長く、10905mmのIIに対して11200mm。この295mmのアドバンテージが、12列、13列のシート列数を設定するも、ピッチの窮屈感を緩和していた。IIは11列のみの設定で、ゆとり空間を重視していたようだ。

 搭載されたエンジンはV8・20L(20089cc)の8M20-I。2200回転で400psを発生するユニットで、余裕あるパワー走行を実現していた。トルクは142kgm/1300回転だ。

 運行補助装置としてレーザー光を利用した車間距離警報装置「ディスタンスワーニング」や補助ブレーキにはリターダー、IIIに用意されたインパネ内のTVモニターは、“2階”にあたる客席の様子を確認できるほか、バックモニター機能も持っていた。

 その流麗なフォルムがいまでも人気のMS8シリーズにあって、中でも突出したエレガントさを持つ、このU-MS821P。もうこんなバスが登場することはないのかもしれない。

【画像ギャラリー】バブルという時代の終わりを見つめてきた優美な女王……三菱ふそう エアロクィーンはマリー・アントワネットだ!?(13枚)画像ギャラリー

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