1985年つくば万博の連節バスは入場者の大量輸送を目的に、スウェーデン・ボルボ社製のB10Mに富士重工のボディを架装したものであった。
ボルボ・FH-I B10M連節バスが1985年の科学万博でスーパーシャトルとして走ったが、日本で初めて運行された連節バスと現在運行されている連節バスとの共通点や相違点など、比較することもなかなか興味深い。
(記事の内容は、2023年5月現在のものです)
執筆・写真(特記以外)/諸井泉(元シャトルバス中央事業所第6グループ運営管理者)
※2023年5月発売《バスマガジンvol.119》『日本を走った初めての連節バス』より
■現在のバス以上に先進的な走行装置類を与えられていた!
ここでは運転・整備取扱編としてボルボ・FHI B10M連節バスの概要について紹介する。
●1:制動装置
(1)主ブレーキ
主ブレーキは空気式で、前軸の2輪と中輪の2輪にそれぞれ分離した独立2系統。後輪の2輪は、ブレーキペダルを踏むことにより前軸又は中軸のどちらの系統からもエアが供給され、このエア信号圧としてリレーバルブが作動してエアを後車体のブレーキタンクからブレーキチェンバーに送り制動が行われた。
ブレーキ形式は、前・中・後軸共内部拡張式リーディングトレーリング形であった。
尚、圧縮空気系空気乾燥機を備え、後軸にロードセンシングバルブを備えていた。
(1)駐車ブレーキ:中輪制動用スプリングブレーキ
(2)補助ブレーキ:オートトランスミッションに内蔵しリターダを装備
(3)非常ブレーキ:中輪ブレーキと兼用の内輪制御用スプリングブレーキを装備
●2:緩衝装置
(1)前輪及び後輪:円形ローラーベローズ空気ばねのパラレルリンク式で、ショックアブソーバーは筒形復働式。尚、トーションバー式スタビライザーを装着。
(2)中輪:車輪前後に円形ローラーベローズ空気ばねのパラレルリンク式で、ショックアブソーバーは筒形複合式。尚、トーションバー式スタビライザーを装着。
●3:車わく
コ形断面の主フレームと角型断面のクロスバーとで組み立てた椅子形フレーム構造。
●4:連節部ターンテーブル
前車体と後車体を連接するターンテーブルは、水面方向の回転と垂直方向の動きが可能な機構である。尚、このターンテーブル部には、連節部の曲がり角に従い後輪転舵の連節棒が取り付けられていた。
●5:車体
車体側板部は角型鋼材を主材にした溶接結合による骨格構造に鋼板を張った構造。
●6:空調装置
暖房装置は温水式、前車体の冷房装置は走行用エンジンによる直結式、後車体サブエンジンによる補助機関式であった。
●7:騒音防止装置
消音機を2個装着、原動機の圧縮比を低く設定、エンジン右上部と床下に吸音材(アルミ箔付きグラスウール)を取り付け、原動機と消音機の間にはフレキシブルチューブを使用していた。
●8:灯火装置
(1)前面:2灯式前照灯コンビネーション形の方向指示器(非常点滅表示灯兼用)、車幅灯(駐車灯兼用)及び補助前照灯を装備。
(2)側面:側面方向指示器(非常点滅表示灯兼用)及び補助方向指示器を装備。
(3)後面:後面方向指示器(非常点滅表示灯兼用)、尾灯(制動灯、駐車灯兼用)後退灯及び反射器装備。
●9:その他
(1)降車室内確認及び車外後方確認のためモニターテレビ装置を備えていた。
(2)非常時、運転手への連絡のために非常連絡押ボタンを後車室内の左右窓柱部に千鳥に4か所及び警報ブザーを運転席付付近に取り付けられていた。
(3)連節部に注意銘板取り付け:1・連節部の動きにご注意ください。2・幌にもたれかからないでください。
(4)後退時のアンチジャックナイフ機構として前車体と後車体のフレームにストッパーを取り付け、連節部の曲がり角が44度でウオーニングランプとブザーのスイッチが作動し、47度で非常ブレーキが作動した。
(5)長さ(保安基準第2条)及び車両総重量(保安基準第4条)の緩和にあたり安保上の制限項目を表示。「全長18.00米、重量24.10トン」銘板を運転者席右側のスイッチボックス部と車体後面右側の見やすい箇所に設置。文字は横170ミリ/縦47ミリの寸法内に横2段書き、黒丸ゴジック体で記入された。
【画像ギャラリー】もちろん当時最先端!! 現在のバスと比べても負けず劣らずの機器を備えたつくば85スーパーシャトル(7枚)画像ギャラリー
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