チェコ共和国にある地方都市のフラデツ・クラーロヴェー。この周辺地域の公共の足を支えるのが、通常の路線バスに加え現在もヨーロッパでは結構よく使われているトロリーバスだ。
文・写真:橋爪智之
構成:中山修一
■フラデツ・クラーロヴェーという街
フラデツ・クラーロヴェーはチェコ共和国のボヘミア東部、ラベ川とオルリツェ川の合流地点に位置する、人口約9万5千人の地方都市だ。
「ラベ川」と言うと馴染みが薄いが、ドイツ語の「エルベ川」と言えばピンと来る人も多いのではないだろうか。近隣のパルドビツェ市を合わせた都市圏人口は、約34万人に達する。
11世紀頃には文献で確認されている歴史の長い都市で、フラデツ・クラーロヴェー大学やカレル大学などがキャンパスを置くなど、大学都市としても知られている。
■市内交通の主役はバスとトロリーバス
そのフラデツ・クラーロヴェー周辺地域の主な公共交通機関は、バスおよびトロリーバスだ。フラデツ・クラーロヴェー公共交通会社(DPMHK)が運行を担い、市民生活を支えている。
1928年に、前身となるバス会社が創業し、路線バスの運行を開始。1949年にはトロリーバスも運行を開始した。1950年以降は国営企業となったが、1997年に現在の組織が設立され、市が全株を保有する株式会社となった。
市内の路線網は、バス20路線、トロリーバス8路線で、夜間には深夜バス4路線が運行される。日本との大きな違いとして、チェコはプラハのような大都市のみならず、こうした地方都市でも深夜バスが毎時1~2本運行されていることで、チェコの公共交通機関は24時間365日眠らない。
チェコでは、首都プラハでもタクシーをあまり見かけないのだが、地方都市ですら深夜の移動がきちんと確保されているこの状況であれば、タクシーも商売あがったりだろう。
■地方都市に似つかわしくない立派なバスターミナル
フラデツ・クラーロヴェーは、他のヨーロッパ諸国の典型的な都市と同様、鉄道駅は市の外れに位置しており、多くのバス路線は、駅と市内中心部の間を結んでいる。
歴史が長いヨーロッパでは、すでに都市が形成されたところへ鉄道が敷かれたため、鉄道を市内中心部まで引き込むことは難しかったことが要因で、バスを含む市内交通は鉄道からの旅客を市街地まで運ぶ役割を担っている。
鉄道駅から数百メートルの場所にはバスターミナルがあり、近年改装されたことで非常に近代的で立派なデザインとなった待合室やホーム屋根が目を引く。プラットホームはA~Jまで10本も用意され、ここへ次から次へとバスが発着していく。
そのバスターミナルには、バスとトロリーバスの両方が乗り入れ、市内線のほか、郊外方面の近郊路線や、都市間高速路線バス、国際路線のフリックスバスまで乗り入れ、ドイツやポーランド方面へ直通するバスも運行されている。
トロリーバスが乗り入れてくるため、一部のプラットホームには架線が敷かれているが、架線とは別に電気バス(EV)の充電設備も設置されており、終点に到着したEVは、ここで折り返しまでの間、充電をして次の運行へ備える。





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