「パルマ」は、イタリア中部のエミリアーロマーニャ州に位置するパルマ県の県都で、古代より歴史を有する、人口約20万人の地方都市だ。そんなパルマの街でバスウォッチ!
文・写真:橋爪智之
構成:中山修一
■生ハムとチーズで有名
パルマという名前を聞いて、何を思い浮かべるかは人それぞれだろう。サッカーファンなら、1913年創立のイタリア一部リーグセリエAの老舗チーム「Parma Calcio 1913」(旧パルマFC/2015年に破産して再建された)がすぐに思い浮かぶかもしれない。
ほかにも美食の町として知られている当地は、プロシュット・ディ・パルマ(生ハム)やパルミジャーノ・レッジャーノ(チーズ)といった、日本でもおなじみの食材が名を連ねる。
■トロリーバスが活躍する町
そのパルマ市の主要な交通機関は、バスとトロリーバスだ。運営主体はTEP(Tranvie Elettrici Parmensi/パルマ電気トラム)で、名前に電気とトラムが入っているが、バスの営業も担っている。
トラムは1954年に廃止され、以降は電力や水道、ガスといった公共インフラも含めた管理会社となったが、その後に州内のバス事業を吸収して市内公共交通の運営全体を引き受け、現在はパルマ市および州内全域の公共交通を管理する会社となった。
1953年、トラム路線の一部を引き継ぐ形で開業したのがトロリーバスで、4路線が運行されている。市内路線は、バスとトロリーバスで共通の系統番号が使われ、1〜23番(欠番あり)の15路線が運行されており、一方パルマ市と周辺地域を結ぶ郊外路線は、100路線以上が設定されている。
紙のチケットは、昔ながらのイタリアらしく、取り扱いのあるタバコ屋やバールの売店などで購入できるが、他にいくつかの銀行ATMでも買えるというのは面白い。
またコンタクトレスのクレジットカードを持っていれば、車内でタッチすればそのまま乗車することが可能だ。市内チケットは1乗車80分有効(乗り換え/乗降自由)で1.70ユーロ、郊外路線は運賃変動制になっている。
■立派なバスターミナルが設けられたパルマ駅
同市の玄関口でもあるパルマ駅は、2025年現在は改装工事中となっているが、地下に駅南北間を跨ぐ形でバスターミナルが設けられており、鉄道で到着した利用客は、そのまま地下のバスターミナルからバスに乗車することができる。
いわゆるパルマ市の市街地は駅の南側に位置しているが、北側には住宅街やショッピングモール、工業団地などが広がっており、分断されていた南北間を結ぶ構造となった。
駅から南側の市街地へ伸びている路線は、トロリーバス1番と何路線かのバスで、トロリーバス4路線のうち3路線は、駅を完全に無視して、目抜き通りとなるレプッブリカ(共和国)通りを東西に運行されているのは興味深い。
この路線形成を見ると、日常的な市民の動きとして、南北方向(駅方面)よりも東西方向が多いということが窺い知れる。
なお、唯一駅を発着する1番だが、これも駅地下のバスターミナルへは乗り入れておらず、駅前から100mほど進んだ大通り沿いに停留所が設けられていて、何故だかトロリーバスだけ冷遇されているようにも見える。
どうやら、以前は駅前ロータリーまで乗り入れていたのだが、南北間を結ぶ地下バスターミナル建設のため、駅前ロータリーが掘り返されて消滅。
行き場を失ったトロリーバスは、やむなく駅に一番近い大通り沿いに終点が設けられることになったようで、架線がないと走れないトロリーバスの弱点がここで露呈した形だ。
しかし、そうであれば地下ターミナルに架線を引き込んで、乗り入れさせてあげれば良かったのに…とも思う。








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