兵庫県の姫路市内を歩いていると、駅前付近などに公共交通機関以外の車をほとんど見掛けないエリアがあるのに気づく。
文・写真:橋爪智之
構成:中山修一
■兵庫県内最大の都市・姫路
姫路市は、人口約53万人を擁する兵庫県内最大の都市で、全国順位でも32位に付ける。世界遺産に指定された姫路城で知られ、季節を問わず国内外から多くの観光客が訪れる人気の地方都市だ。
その玄関口となる姫路駅には、山陽本線と播但線、姫新線が乗り入れ、新幹線はのぞみ号の一部も停車する。姫路駅前から北側へ、真っ直ぐ伸びる大手前通りの先には、白鷺城の名で親しまれる姫路城の美しい姿を拝むことができる。
■交通規制で一般乗用車がいない
その大手前通り、市内を東西に走る十二所前線より南側の駅前付近は、よく見ればバスやタクシーなど、公共交通機関以外の車を見掛けない。
市が「歩行者に優しいまちづくり」を実現するため、2012年から工事を始め、2015年4月1日から一般車の乗り入れを禁止したのだ。
車社会の日本において、バスターミナルやタクシープールのような敷地を除いて、一般車の乗り入れを完全に禁止しているところは比較的珍しい。
こうした一般車の乗り入れ規制、日本以外の国では多く見られる。なかでも積極的なのはヨーロッパで、ドイツあたりだと姫路のような駅前大通りの一部区間どころではなく、市街地全体が進入禁止となっている都市も多い。当然、市内に用事がある人は、自家用車ではなく公共交通機関を利用しなければならない。
■交通規制=住民や配送を妨げるものではない
車社会の日本では、自家用車=目的地の目の前まで乗って行くのが常識となっているので、町の中心への乗り入れ禁止ということに、疑問を持つ人は少なくないだろう。
また進入禁止となれば当然、来店する客や配送車はどうするのか、という疑問も出てくるわけで、地元商店街や飲食店経営者は心配になるだろう。
宇都宮でトラムを建設する際、商店街が建設に反対をした、という話が聞こえてきたが、何の説明もなく店の前の道路が通行止めとなる、と聞かされたら、反対をしたくなる気持ちは分からないでもない。
地域によっては決してバスの便が良いとは言えない姫路市でも、反対の声は多かったのではないかと推測され、よく実現できたものだと感心させられた。
ただ、市街地の部分的にでも、交通規制を行うことのメリットは大きい。まず姫路市が掲げた「歩行者に優しいまちづくり」という部分において、一般車の往来が減少することにより、歩行者が安心して歩ける町となる。
もちろん、渋滞に悩まされることもなくなり、排気ガスや騒音などの公害も減ることになり、環境が改善される。実際、姫路駅前を歩いてみると、たまに通過するバスやタクシー以外の騒音は少なく、快適に感じる。
多くの人が心配する、自家用車や配送車の通行規制だが、姫路市のホームページを確認すると、事前に警察署へ許可を申請することで、車庫に出入庫する住民の車や配送車、あるいは身体に障がいがある人を輸送する目的の車両などへ通行許可証を発行するとしている。
これは至極当然のことで、通行規制について議論されるケースにおいて、反対派の意見として必ず上がってくる話だが、こうした施策は地域住民の移動や商店の営業を妨げる目的のものではない。
海外の事例を見ても、許可された地域住民や配送車は乗り入れ可能で、あくまで他の地域から私的な目的で訪れる車だけを規制していることが分かる。





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