客席からは視認できない低い運転席と凄みのあるエンジン
直径480mmの大径ステアリングを握る運転席はアイポイントの低い位置にあり、頭上の天井まで広い吹き抜け空間がある。ボディ前方ルーフの角も直視でき、車両感覚が実に把握しやすい。
既報のエアロキングは運転席の頭上が2階席のフロアで塞がれていて、車両前端のルーフ位置はまったく見えない。
たとえば路肩の木々にヒットさせないため右車線を走らせる場合、セレガRGJなら、それを目で確認しながら走ることができる。左右のバックミラーには、前後左右4輪の接地位置が比較的に見やすく写し出されており、狭隘路走行でも運転しやすかったのが印象深い。
さて搭載エンジンは、当時日野が培ってきた大型車両の主力だったF17D。縦置きV型8気筒OHVのディーゼルターボで、総排気両は1万6745㏄。最高出力は331kW(450ps)を2000回転で発生。最大トルクは1618Nm(165㎏m)で1300回転で発生する。
回転計のグリーンゾーンは900~1200回転、レッゾゾーンは2400回転から。つい最近まで常識的だったFFシフトの6段マニュアルミッションを操作する感覚に、どこか懐かしさを覚えた。ついでにいうと吹き抜け空間と客席中程に接地されたTVモニターはブラウン管式だった。
手首の返しで軽く操作できるシフトレバーをセカンドに入れるとコクッと軽いクリックを感じ、やがてその指示を迎え入れてくれるようにもうワンストロークする。サードへのシフト操作もその感覚で、適切な間合いが計れる。ゆっくりと悠長な操作感だが実に小気味良い。
トルクはとても太く、全回転域に大きな余裕を感じさせる出力特性で頼り甲斐のあるスロットルレスポンスを発揮。ワイドオープンするとその動力性能は侮れないポテンシャルだ。往時のバスが持っていた、凄味のあるエンジンパフォーマンスに感激させられた試乗となった。