西鉄が7月1日から割引運賃や割引定期、割引乗車券等の廃止・値上げを発表した。単純に値上げと聞くと利用者には顔をしかめる事態で、なかなか受け入れがたい側面はある。一方で以前からすでに疲弊しているバス会社に、新型コロナウイルスまん延が追い打ちをかけた格好になっているのも事実である。値上げや廃止の対象や利用者とバス会社双方の疲弊をみてみる。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
【画像ギャラリー】西鉄が7/1から割引運賃や乗車券等を値上げ!
運賃や料金が変更・廃止になるサービスは
今回値上げや廃止の対象になる運賃やサービスの一部を抜粋する。 いわゆるごく短距離の割引運賃である100円運賃は150円に値上げになる。値上げ率は50%だ。福岡市内の都心100円フリーエリアを対象とした定期券は販売が終了される。
1日乗車券はいずれも紙券のみが値上げの対象でデジタル乗車券は従来のままだ。福岡市内が100円値上げの1000円に、北九州市内が200円値上げの1000円になる。
利用者の視点では?
普通運賃や定期乗車券そのものには手を付けないので、大半の利用者には実質的な影響は少ないだろう。だが上記で抜粋はしていないものの、高齢者の買い物や通院に利用される65歳以上限定の乗り放題定期券「グランドパス65」や、主婦の日中の買い物や用事の需要があるだろう「ひるパス」等の割引定期券が廃止されることで、影響を受ける人も数の多少は別としていることだろう。
これら廃止されるサービスを統合した新たな新商品も発売が開始されるものの、利用者からすれば値上げや割引運賃の廃止は、単純にサービス低下と映り良い感情はない。
もちろん、コロナの影響で飲食店をはじめとする商業全般的に企業が疲弊しているのは国民みんなが理解はしているものの、利用者個人も疲弊していることも忘れてはならないだろう。
バス会社の側面は?
バス会社は公共交通機関として沿線住民の足を確保する重要なインフラであるがゆえに、赤字だからといって安易に路線を廃止することはしにくく、合理化で統廃合したり、整理したり、減便したり、車両を大型から中型に変更するなどの努力はしてきているはずだ。
さらにバス車両を新型に更新してメインテナンス費用や、向上した燃費分の燃料費を節約して経費圧縮をしている。
しかしどうにもならないのが運転手の確保だ。バスの台数分運転手の数が必要で、鉄道のように車両を増結すれば定員が増えるという話ではない。一つの解決策として西鉄でも実施されているのが連節車の投入だ。
運転手一人で約2台分の旅客を輸送することができるので効率は若干上がる。しかしそれまでだ。
万策尽きれば赤字路線を廃止して空いた車両と運転手を黒字路線に回すか、増収のために値上げを考慮せざるを得なくなる。西鉄は路線を維持する決断をしたうえで、値上げを選択した格好だ。
このような動きは地方都市では次々と起こっていくだろうし、特に現在はコロナの影響で運休されている高速バス路線がそのまま運転されることなく休止・廃止へと舵を切ることも考えられる。
しかし鉄道では代替ができない路線バスだけは、維持するためにやむを得ないことなのかもしれないが、同時に疲弊している利用者のことも考えれば普通運賃の値上げや路線バスの廃止だけは回避してほしいと願うばかりである。