バスの運転士は安全にバスを運行させる運転操作はもちろんだが、車内の安全にも気を配らなければならない。そのために乗客がぜひ知っておいてほしい運転士からの「うれしいな!」という「お願い」を聞いてみたのでいくつか紹介する。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
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まずは「乗降時の挨拶・声掛け」だ。これはお互いに気持ちがいいという理由も否定はしないが、一瞬のコミュニケーションで乗客の状態を知ることができるメリットがある。
バスに乗る人がすべて乗り慣れているわけではないし、コミュニケーションがうまく取れない方もいる。下車する停留所がよくわからずにソワソワしている人もいる。であれば聞いてもらって安心して乗ってもらった方が運転士も運転に集中できる。
次に「クルマ椅子利用客の乗車時にバリアフリーエリアをすぐに譲ってほしい」だ。クルマ椅子利用客の乗車を確認した運転士は、下車してスロープを出してバリアフリーエリアに案内する。
バスによっては普段はそこに折りたたまれた座席があり着席できる。その場合、座席2つ分の乗客に席を譲ってもらわなければならない。これを運転士が準備のために運転席を離れる前に席を譲ってくれると、スムーズに座席をたためてクルマ椅子利用客が乗車でき、前乗りバスの場合は乗車を待っている人が早く乗車できるメリットがある。
次に「ノンステップエリアでは高齢者に席を譲ってほしい」だ。座席数が桁違いなので一概には言えないが、鉄道よりもバスの方が高齢者に席を積極的に譲っている場面をよく見かける。
運転士は車内転倒事故防止のために着席できるならば全員着座してほしいが、座席数が限られているので立席が出るのは仕方がないものの、高齢者が後方のステップのある座席まで行って着席するよりも、前方のノンステップエリアで着席してもらった方が早く出発できるので着席の確認が早く安全だ。
次は「立席時にしっかりとつり革や手すりにつかまっていてほしい」だ。当たり前のように繰り返し車内放送で呼び掛けられているが、実際にはスマホを持ったりカバンを持ったりで、意外に体を支えているのは立っている足だけという人は多い。
これは本当に危険で発車や停車の際は細心の注意を払うが、急な飛び出しや割り込みでやむを得ずブレーキを踏むことはあり得る。不測の事態に備えるためにも立席の際には何かにつかまっていてほしい。
「雨天時に傘はたたんで乗車してほしい」だ。雨に濡れた傘をバラバラと振りながら乗車する人をたまに見かけるが、不快なだけではなく広がった傘のスペース分だけ立席スペースがなくなるので、乗車したら速やかにたたんでボタンで留めるなど、できるだけコンパクトにまとめてほしい。
最後に時代の要請でもあるが「コロナ禍なのでマスク着用を徹底してほしい」だ。日本におけるマスクの着用率はかなり高いが、不特定多数が乗車する公共交通機関なのでマスクの着用は「公共の福祉を増進」するための社会の要請だ。ルールや規則がということよりも「みんなのため」だと考えてほしい。
以上6つの視点でバス運転士に聞いた乗客へのお願いをまとめてみた。事業者や地域や運転士個人によってお願い事は異なるだろうが、要はお互いに気持ちよく安全に目的地まで乗ろうという心からきていることだけは間違いなさそうだ。
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