何とか国内旅行には行けるようになったと思ったら、コロナの新しい変異株が広まり始めて、商用や公用以外での単純な旅行での渡航ができるのは、まだまだ先の話になりそうだ。
もちろん不可能なわけではないが、渡航先によっては滞留を余儀なくされ帰国しても待機をしなければならないので話は簡単ではない。本稿ではコロナ前に取材したボーダー越えの路線バスを取り上げる。
こんな乗りバスにも、自由に渡航できるようになればチャレンジしていただきたい。なお、過去の取材に基づいた記事であるため、表記のダイヤや運賃または制度等は変更されている可能性があることをお断りしておく。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
【画像ギャラリー】自由に渡航できるようになれば乗りたい港珠澳大橋を渡る越境バス(33枚)画像ギャラリー港珠澳大橋
東南アジアの旅行先として人気のひとつである香港やマカオ。地続きではないため往来の主流は高速フェリーである。そこに道路橋が架橋されたのは2018年のこと。香港・マカオに加えて中国本土の珠海にも接続しているので、各地の頭文字を取って「港珠澳大橋」と命名されている。
港珠澳大橋は「Y」字形になっており、二股に分かれる方がマカオと珠海である。全長約50kmの海上橋だ。3つの地域はすべて中華人民共和国ではあるが、往来は自由ではないので事実上の国境がそれぞれに存在する。
このような特殊な事情から、香港では英語でパスポートという表現よりもトラベルドキュメントという表現が多いし、どこに移動しても法的には中国国内なのでボーダーという国境とも州境とも県境とも取れる表現になっていることが多い。
本稿では特に断りのない限り、日本人としてはいずれにしても外国には違いないので、事実上の国境として扱う。
道路交通システムも異なるため例えば香港とマカオを行き来する自動車はナンバープレートが2つ必要なダブルライセンス車に限られ事実上、許可を受けた自動車しか通行できない。物流を担うトラックや越境するバス、またはタクシーや公用車といったところだろうか。
もうひとつ面白いのが通行方法だ。香港とマカオは日本と同じ左側通行で、中国本土は右側通行だ。港珠澳大橋は香港とマカオという左側通行地域が2つあるので左側通行かと思ったら、実は中国本土に合わせて右側通行になっている。
よって香港を出発したバスは橋に入る手前で右側通行に変わり、マカオに入るとまた左側通行に戻る。いずれも立体交差で変わるので「ここから右側通行です!」のような交差点や標識があるわけではない。