以前に伊藤園とのコラボで自販機がバス停になる話題をお伝えしたが、バスマガジン読者からおおむね「いい取り組みだ」との反響をいただいたが、いくつかの疑問も呈された。そこで、今回はシステムを開発した北九州市のYEデジタルに行き取材した。当該記事は関連記事からご覧いただきたい。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
(詳細写真は記事末尾の画像ギャラリーからご覧ください)
■YEデジタルと西鉄との関係は?
まず本社が北九州市にあり、スマートバス停が西鉄バス北九州の停留所から設置されていたので、西鉄の子会社なのかという疑問だが、同社は北九州市の安川電機の関連会社だ。
安川電機は消費者一般には目に留まることの少ない会社だが、産業用ロボットの世界的メーカーでいわゆる日経平均を構成する日本を代表する会社だ。それら産業用機械のシステム開発の一部を担うのがYEデジタルで、スマートバス停の開発もそれらの技術やノウハウが生かされている。
西鉄グループとは地元の関係もあり、協力関係にはある。バス停に関する事業者としての要望や問題点、ノウハウを西鉄グループが提供してスマートバス停を同社が開発するという関係にある。よって本社所在地の西鉄バス北九州のバス停から導入が始まったのも自然な流れといえよう。
同社の本社は小倉北区の米町バス停(砂津方面行き)前にあり、当然のことながら米町停留所はスマートバス停になっている。大きく4種類のスマートバス停がある。
■小さなバス停の電源はどうするの?
西鉄のバス停は、郊外でも電力会社との契約で電柱から商用電源を取っているバス停が多く、バス停名や時刻表が照明に照らされた比較的恵まれた停留所が多いといえる。しかし、そうでない場所では電源が取れずスマートバス停の設置は不可能に思える。
もちろん太陽光パネルと蓄電池を設置して電源を確保するタイプもあるが、どちらかというと大規模バス停向けだ。そこで小規模バス停向けには電源の確保が不要なスマートバス停が開発されている。
これは電子ブック専用端末のような電子ペーパーで時刻表を表示するタイプで、ポール1本だけのバス停にも設置可能だ。電源は一次電池(乾電池のようなもの)だけで、充電すら必要ない。時刻表表示中は電源は不要でスリープ状態のため、乾電池でも数年は交換不要だという。
これらのすべてのスマートバス停にはデータ書き換えのため、携帯電話網を利用するので通信装置は内蔵されている。電子パーパータイプのバス停は広告や動画を表示する機能はないため、通信頻度やデータ量は少なく、やはり電源はほとんど必要ない。
■全停留所に設置しないと意味がない!?
スマートバス停の事業者側の最大のメリットはダイヤ改正や臨時に告知したい内容をその都度、終バスの後に営業所職員が全バス停を回って差し替えなければならないコストや労力を減らせることだ。
紙時刻表の印刷や差し替え人件費等のコストは概ね1回につき1バス停あたり2000円から4000円程度とされている。たとえば年2回のダイヤ改正や年10回程度のお知らせをすべてのバス停で差し替えていくと膨大なコストになる。
よって全停留所をスマートバス停にしないと意味がないという意見はもっともな指摘だ。しかしイニシャルコストやランニングコストがかさんでは、これもまた意味のないことだ。
まずイニシャルコストについては国や設置する自治体にもよるが、スマートバス停への移行には補助金が出るので、これを活用することでさほどの負担にはならないようだ。
そしてランニングコストだが、前述の電子ペーパータイプのものは毎月1500円程度、最も機能が充実している大型のタイプは同1万円程度だ。他に商用電源が必要な中規模タイプと、太陽光パネルと蓄電池を内蔵した小規模タイプがあり、バス停の規模により事業者が選択して設置する。
もっとも簡易でランニングコストが安い電子ペーパータイプは収益を生まないのでそのままコストになるが、大型のものは動画や静止画のデジタル広告が流せるので、この広告料が事業者の収入になる。
路線全体として広告収入とランニングコストとの釣り合いを考慮すればむしろ安く済む路線が多く、全停留所への設置は不可能ではない。一度にすべてというわけにはいかないだろうが、すでに導入している事業者のバス停は徐々に増えていくだろう。
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