統一ドイツの首都で撮りバスだと!? ベルリンのバスはシステムも車両も隙がなさすぎる!!

統一ドイツの首都で撮りバスだと!? ベルリンのバスはシステムも車両も隙がなさすぎる!!

 ベルリンはドイツ最大の都市で、東西ドイツ統一後の首都でもある。ベルリン市の人口は360万人ほどであるが周辺の都市域を含めた、ブランデンブルグ都市圏の人口は約600万人で、ドイツ最大の規模を誇り今なお増加傾向にある。

 元々公共交通整備に熱心なドイツの首都だけに、幹線鉄道(DB・Sバーン)、地下鉄(Uバーン)、トラム、バス、フェリーと多様な公共交通機関が整備され、高い利便性を誇っている。

(記事の内容は、2019年3月現在のものです)
取材・執筆・撮影/石鎚翼
※2019年3月発売《バスマガジンvol.94》『Bus Magazine in Overseas!』より

■黄色に塗られた車体がベルリンの証

MAN製2階建て一般路線バス。多数が活躍する2階建てバス、全長は14m近くあり、乗車定員110名と大きな収容力を誇る。系統番号のXは急行路線を表す。これは2階建てバスでは主力のMAN製Lion’s Cityシリーズ
MAN製2階建て一般路線バス。多数が活躍する2階建てバス、全長は14m近くあり、乗車定員110名と大きな収容力を誇る。系統番号のXは急行路線を表す。これは2階建てバスでは主力のMAN製Lion’s Cityシリーズ

 ベルリンの都市公共交通は、ワイマール共和国時代の1928年に各運行会社を統合の上、州が出資する公社として設立されたBVG(Berliner Verkehrsbetriebe)が担ってきた。

 第二次世界大戦の終戦によってベルリンが東西に分割された際は、公共交通機関もBVG西、BVG東(その後BVBに改称)に分断され、それぞれ独立した経営を強いられたものの(ただし、SバーンはBVG東)、東西ドイツ統一後の1992年には再び統合された。

 その後Sバーンの運営はドイツ鉄道へ移管されたものの、それ以外の公共交通はBVGが一手に引き受けている。地下鉄もバスも、黄色に塗られた車体はベルリンのアイコンのひとつとなっている。

■市内交通の主力の一角として活躍するBVGのバス

ソラリス製連節バス。隣国ポーランドのバスメーカーであるソラリス製Urbinoシリーズの一般路線バス。ソラリス製は連節バスの中では最も多く採用されている
ソラリス製連節バス。隣国ポーランドのバスメーカーであるソラリス製Urbinoシリーズの一般路線バス。ソラリス製は連節バスの中では最も多く採用されている

 ベルリンのバスは主に、急行バス(Express Bus)、メトロバス(Metro Bus)、普通バスの3つのカテゴリーに分かれており、それぞれに系統番号が与えられている。

 急行バスは13系統あり、テーゲル空港をはじめ、郊外とベルリン中心部を主に結んでおり、系統番号の頭に「X」が振られている。

 メトロバス系統は、幹線系統で、高頻度かつ24時間運行を行うことが特徴である。他の国では、BRTと呼ばれる場合もあるが、専用車線が用意されているわけではない。

 なお、これらのほかに夜間バス(系統「N」)が設定され、地下鉄がメンテナンスのために運休する深夜時間帯に、地下鉄路線や一部の幹線バス系統に沿って終夜運行する路線がある。

 幹線の高頻度運転や、24時間運行が充実していることは特筆に値するが、独立採算ではなく、行政が公共交通の維持に責任を持っているため、政策的に行われているものである。

 運賃収受は全て信用乗車制であり、抜き打ちで検札係員が乗車する。ベルリン市の運賃はA~Cのゾーン別で、片道乗車券はABの2ゾーン券、A~C3ゾーン券と、6バス停または3地下鉄駅区間を乗車できる短距離券が用意される。

 最も安価な短距離券は大人1.7ユーロ=270円(2023年11月現在)であるが、一日乗車券(ABゾーン7ユーロ)や、5人まで同時に使えるグループ一日乗車券(ABゾーン19.9ユーロ)などの割引乗車券も充実している。なお、ドイツではバスやトラムはもちろん、地下鉄や幹線鉄道も改札がないのが一般的である。

 車両はサイズも含め多様で、ドイツでは珍しく2階建てバスが多用される。平屋建てのバスも12m級の一般サイズのほか、15m級長尺バスや、18m級連節バスも使用される。最近では電気バスをはじめ、低公害車も増えている。

 マン(MAN)やメルセデスベンツ(Mercedes-Benz)といったドイツメーカーのほか、VDL(オランダ)やSolaris(ポーランド)といった、近隣諸国メーカーのバスも使用されている。

 主力を占めるMAN製のLion’s Cityシリーズ2階建てバスは、全長13.73mと非常に大きなボディを持つ。利用者も多く、バスは地下鉄やトラムに比肩する輸送量を誇っている。

 また、ドイツでは、EUの方針による規制緩和に伴い近年、国内あるいは周辺国への長距離バスの運行が増加する傾向にある。

 市内のバスターミナルには、キリル文字などが書かれたバスも多く発着している。鉄道に比べて安価であることや装備がデラックスであることなど、日本とも同様なウリで利用者に受け入れられている。

 ほとんどの路線がネット予約・発券が可能で、容易に利用できる。また、ドイツ鉄道の特に旧東ドイツ側は高速化改良が十分に進んでいないほか、脆弱な設備であることもあって遅延が恒常化している。

 区間によってはバスのほうが速かったり、定時性が高い場合もあり、ベルリン・ドレスデン間や、隣国チェコへの便などは頻発している。

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