人気のパワースポットや注目の場所へのバス旅を月1回セレクトしてお届けする。2月はさまざまなニュース媒体で特集されている紫式部ゆかりの場所だ。また巻末に「バス占い」を掲載するのでバスファンでなくても心の潤滑剤としてお楽しみいただきたい。
文:古川智規(バスマガジン編集部)
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■鉄道唱歌にもうたわれた石山寺
明治時代に誕生して今でも鉄道マニアの間では内容まで知る人が多い鉄道唱歌は知育目的で作曲された唱歌だが、知っていると現在でも地理や歴史に役に立つことが多い。
「汽笛一声新橋を」で始まる東海道篇は新橋から神戸までの東海道本線を66番までの歌詞で歌い上げている。分語調で現代人にはわかりにくい歌詞もあるが、固有名詞や歴史上の人物がふんだんに入っているので地理と日本史を知っていればさほど難しくはない。そしてゆかりの地があったことを思い出させてくれるのでありがたい面もある。
件の鉄道唱歌東海道篇の40番に「瀬田長橋横に見て ゆけば石山觀世音 紫式部が筆のあと のこすはこゝよ月の夜に」という歌詞がある。今話題の大河ドラマの主人公は源氏物語を書いた紫式部だが、現在の滋賀県大津市にある石山寺で源氏物語を書いたとも着想を得たとも伝わる。いずれにせよ紫式部ゆかりの地であることは間違いない。
■バスで行けば歴史まるごと!
石山寺へは京阪・石山坂本線(いしやまさかもとせん)で終点の石山寺停留場で下車すればいいのだが、山道までは若干遠く徒歩10分ほどかかる。もっとも近くまで行けるのはやはり路線バスだ。
大津駅または石山駅から京阪バスの大津市内線に乗車して「石山寺山門前」で下車すると目の前で便利だ。途中で鉄道唱歌にうたわれる瀬田川にかかる「瀬田の唐橋」すぐそばを通る。
現在では大きなことを制する勝負のことを山崎の合戦の舞台であった「天王山」と称することが多いが、もっと昔は京都防備の要は瀬田川であり唐橋を制するかどうかで天下が揺れた歴史上の乱が多くある。
■石山寺と秋月
石山寺は真言宗の寺院で、天平文化華やかな奈良時代に建立された。源氏物語の平安時代よりも現代の時代区分で1つ前にあたる。紫式部に限らず、清少納言や和泉式部の作品にも登場する。当時の文学作品になくてはならない景勝地だったのだろう。
また、鉄道唱歌には「月の夜に」という歌詞が最後にあるが、周辺の近江八景の一つ「石山の秋月」をうたったもので、近江八景自体は鉄道唱歌の39番から43番までちりばめられている。
今の季節は秋月ではないものの、路線バスに乗れば瀬田の唐橋、石山寺、秋月とすべてを最寄りの停留所で下車すれば簡単に堪能することができるのは、停留所間が短く細かく刻まれている路線バスならではの楽しみ方だろう。
京都までは各地から昼行・夜行の高速バスや新幹線があり、空港からも高速バスが出ているので、日本全国から行くことは容易にできる。石山駅までは京都から東海道本線で4つ目の駅で15分とかからない至近距離だ。
旅行で京都に行く人は多いが、ついでに大津まで足を伸ばせば今話題の歴史を散策することができる。舞台は平安時代の京都でも、着想を得たのは大津だとすると源氏物語ファンにとっては行っておきたい景勝地だ。
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