キングオブ深夜バスの名を天下にとどろかせた西日本鉄道(西鉄)の高速バス「はかた号」は1日1往復の運行で、およそ1000キロメートルを走破する。多客期には続行便として2号車が出ることがあるが意外にも便利だ。本稿は新宿西口を出発し眠るまでの乗車記前編だ。
文/写真:東出真
編集:古川智規(バスマガジン編集部)
(詳細写真は記事末尾の画像ギャラリーからご覧いただくか、写真付き記事はバスマガジンWEBまたはベストカーWEBでご覧ください)
■誰もが知っている「はかた号」
「のぞみ」「ひかり」「こだま」これらを聞いた時、どのようなものを思い浮かべるだろうか。恐らくほとんどの人が東海道新幹線をイメージしたと思う。列車の愛称名はよく話題になるが、高速バスの多くの路線にも愛称がついているが「はかた号」ほど認知度の高い路線も珍しいだろう。
ドリームなごや号のような地名の付いたもの、マスカット号のような目的地の特産品など連想させるもの、ドリームルリエのようなグレードを押し出したものなどバラエティに富んでいるが、今回はさまざまな意味で有名な「はかた号」に乗車したのでレポートする。
下り便の出発地は東京である。新宿駅西口にある京王バス26番乗り場から出発する。20時過ぎに到着したが、辺りはすっかり暗くなり周辺の飲食店などから人が頻繁に行き来する様子が見て取れた。件のバス停での路線バスは終了しているため、本当にこの場所で合っているのかやや不安である。
少しずつ人が集まりだした21時前に西鉄の「はかた号」がやってきた。「はかた号」は東京・新宿から福岡県の北九州市と福岡市を結ぶ夜行バスで、約1100kmを14時間以上かけて走り抜ける日本最長クラスの高速路線バスだ。その距離や乗車時間の長さも然ることながら、バラエティ番組で「キング・オブ・深夜バス」などと紹介されたことで広く知れ渡ることになり、以来ずっと人気の路線だ。
■バスタ新宿ではなく新宿西口!
乗り場ではバスの到着前に合わせて係員がやってきてバスの誘導や乗客への案内を行っていた。また乗務員がチケットの確認を行い、手際よくトランクに荷物を入れていく。これほど有名な夜行バスがとも感じるかもしれないが、実は本来はかた号はここから出発しているわけではない。
定期路線として運行されているはかた号はここから約500mほど離れた渋谷区の「バスタ新宿」から出発している。ではこのバスはというと2号車、いわゆる「続行便・臨時便」のはかた号である。繁忙時に運行されることがあるというが、年に数日程度ということで実はここから乗車するはかた号が貴重なのは福岡に着いたときに証明されることになる。
バスタ新宿に入れるのは定期のいわゆる1号車のみで、続行便や臨時便は入れない。よってもともと共同運行していた京王バスの停留所を使用している。バスタ新宿はJRからの乗り換えは便利だが他の路線から乗り換えるにはどこからも遠すぎて実は不便この上ない。
何もないバスタよりも周りに飲食店や買い物ができる店舗が多い西口の方が便利なのだ。これから長い時間乗車する高速バスには食べ物や飲み物を持ち込んだり、腹ごしらえしたりと色々と「儀式」があるのだが、西口の方が地上・地下街ともに圧倒的に便利なので予約時に2号車に当たればむしろ喜ぶべき便なのかもしれない。
コメント
コメントの使い方