首都圏を中心に膨大な数のバス車両を保有している、大手と呼ばれるバス事業者。そんな大手事業者の車とほぼ同じ色に塗られた路線バスを、遥か遠く離れた土地で見かけることがたまにある。
文・写真:中山修一
(バスマガジンWeb/ベストカーWebギャラリー内に、岩手県交通の一般路線バス車両各種の写真があります)
■グリーンが映える東京の国際興業バス
本家とは離れた場所で見られるバスのカラーリングの一つが国際興業。同社は主に東京都北部と埼玉県南部にバス路線網を広げる民営バス事業者だ。
白地に濃淡2色の緑を組み合わせ、側面の一部ラインを矢尻状に濃淡緑で塗り分けたデザインが、一目見ればそれと分かる国際興業バスの強力なアイキャッチとなっている。
明るい緑の色合いは時期によって異なり、古い時代から続く淡い草色と、1998年頃から出始めた彩度の高いライトグリーンの2通りがある。
■同じ色をしたバスが岩手県にいる!
そういった国際興業バスと殆ど同じ色をしたバスが、東京から400km以上離れた岩手県にも走っている。盛岡を中心に県内各所にバス路線網を持つ、岩手県交通の路線バス車両がそれだ。
社名の文字やロゴは当然異なるにせよ、白地に濃淡緑色と矢尻状の塗り分けは同等。岩手県にいながら「これ東京のバスじゃないの?」と錯覚してしまうほど、国際興業テイストそのままなのである。
ではどうして、東京都/埼玉県で見られる国際興業カラーのバスが岩手県にいるのだろうか?
■国際興業カラーにまつわるカラクリ
岩手県交通は、岩手県内のバス事業者数社が合併して1976年に発足した民営バス事業者だ。岩手県交通にも、実はシルバーと白のツートンカラーに青帯を組み合わせたオリジナル塗装がある。
オリジナル塗装のほか、前身であった会社の一つ・岩手中央バスの一部に、国際興業から譲り受けた車両が存在し、車体を塗り替えず国際興業カラーのまま運用していた。
それら車両は岩手県交通発足後も塗装変更されず、1980年代前半まで使われており、これが岩手県交通での国際興業カラーのルーツと言える。
また、同社が1986年に国際興業グループに入り、2000年に同社が保有している路線バス車両を国際興業カラーに統一する動きがあり、この時点で晴れて、国際興業カラーが岩手県交通の“標準色”と呼べるカラーリングへと変わった。
グループ会社となった以降も国際興業カラーの車両が存在しない時期が長く続いていたものの、最終的には国際興業グループに入った経緯が、今日見られる岩手県交通の塗色へと繋がる、きっかけの一つになったと想像できる。
岩手県交通は2013年に国際興業グループから離脱しており、2025年5月現在での同カラーリングは、感覚的に国際興業グループだった時代の名残といったところだ。
■新色あります
今日も依然として国際興業カラーに塗られた、岩手県交通のバスが元気に走り回っている様子を、盛岡駅などを訪れると普通に見かける。
とはいえ、実は2020年頃に岩手県交通にも新色が登場している。白地とライトグリーンは国際興業カラーの色合いとほぼ同じながら、濃いグリーンと側面の矢尻デザインがなく、代わりに銀色の帯が腰に巻かれたスタイルだ。
現在のところ、2000年に正式デビューを果たした国際興業カラー≒岩手県交通“標準色”と、2020年以降の新塗色両方が混ざって活躍している。
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