LED表示機には決してありえないもの、それが分割式の方向幕だ。元は手動式の時代に前面の系統番号と行先を分け、分割にすることによって行先表示コマの共通化を図っていた。
それは一部の事業者に今でも残っている。今回は分割式方向幕を使用している事業者を用途別にくくって紹介する。
文/写真:高木純一(バスマガジンvol.78より)
事業者によって表示ルールだけでなく表示数が異なる
日立電鉄交通サービス(茨城県)と京王電鉄バスグループ(東京都)は、東日本地区では珍しく前面の方向幕を分割にしており、日立は[系統番号]と[経由・行先]、京王は[系統番号・経由]と[行先]に分けている。
これは前面系統番号と側面方向幕が連動し、前面行先幕と後面方向幕が連動する、という方式で動いている。なので側面幕のコマ順によっては前面系統番号幕が同じ系統番号のコマが続くこともある。これはほかの事業者にはなく、この2社の特徴でもある。
名古屋市交通局は前面の方向幕が分割式だったが、2000年度からは一体式の方向幕に変わった。この名古屋市交通局の系統番号幕は手で回す手動式であり、最後まで残った手動式の方向幕だと思われる。
名古屋市交通局は前面のみが別で、側面と後面が連動するタイプで、後面方向幕が相互表示になっているのが特徴だ。鹿児島市交通局も90年式くらいまでの車両が同じような仕様の方向幕であったが、後面は系統番号と線区表示をしていた。
北陸鉄道バスは珍しく側面方向幕が分割式であった。側面の上側が前面幕と後面幕と連動しており、下の経由幕は別作動式、と珍しい方式をとっていた。またこの方向幕は特殊な表示機を用いており他の方向幕とは幕の検知位置が異なっていた。
西の事業者は独自の進化を遂げた方向幕が目白押し!?
ちょっと珍しいのが京都市交通局で、90年代始めまでは前面と後面が分割式であった。なのであまり例のない5点式の方向幕であった。また京都は前面右側に系統番号を表示しているため、系統番号幕も昔から右側表示であったが、後面の系統番号は左側に付いていた。
よって京都市交通局は前後の系統番号、前後の行先幕、側面幕の3点を制御できる特殊は方向幕制御機を採用していた。さらに同じく京都府を走る京阪宇治交通は前行先のみ別動で前系統・側面・後面が連動する独特の方式を用いていた。
神戸市交通局は前面が分割幕であったが名古屋市交通局とは異なり、系統番号も電動式であった。それ以外は名古屋市交通局と同じく前面行先のみ別で側面と後面が連動するが、京都市交通局と同じように3点指令式の特殊な方向幕指令機を採用している。
分割式の方向幕といったらなんと言っても長崎自動車が一番である。前面も側面も後面も分割式であり、なんとバス1台に方向幕の表示機が6機も搭載されているのは驚きである。
さらに驚くのはその6機とも規格が同じもの、ということがすごい。この方向幕は前面・側面・後面の各面で[行先]、[経由地と系統]に分かれており、それぞれが連動するものとなっている。
なので「回送OO経由[30]」というような面白い表示が見られるのも長崎自動車の特徴である。
なお、熊本電鉄バスの一部の車両も6点式の方向幕を搭載した車両があるが、側面幕は北陸鉄道バスと同じようなサイズで上部行先、下部経由と系統、というように分かれている。
前面と後面はちょうど半分に分かれて見えるサイズにしているのは長崎自動車と同じである。