広島から福岡へ至る昼行路線であったミリオン号。車両は夜行並みのスーパーハイデッカーの29人乗りで、当時の豪華版車両として定番のタイプであった。
執筆/写真:石川正臣(バスマガジンvol.82より)
昼行便にとっては中央席は左右を見通せる特等席だった!!
広島バスセンター-福岡天神「ミリオン号」(広島電鉄/相手会社:西日本鉄道)
当時、昼行専用の3列シートといえばほとんどの場合で2:1だったが、このミリオン号は夜行兼用でもないのに独立3列だった。
カラーは若干異なっても両社共通デザインであり、あくまでも昼行専用車両であった。車内には乗務員仮眠室はなく、座席のリクライニングも斜角度が昼行仕様の浅いものだった。
このバスには広島バスセンターから乗車した。乗車が定刻通りに開始され、発車1分前、列最後に係員にチケット渡せば「よしそろった」のかけ声。豪快に車両が動き出し、センター3階から一気に急坂を下りる。
広島バスセンターのスロープを下ることは何度も経験したが、スーパーハイデッカーからのハイアングルはまた格別だ。同時発車の路線バスも追随しているかのように走り出した。
指定された席は前でも後でもないし窓側でもない、ほぼ真ん中のほぼ中央。このとき初めて気がついたが、昼行便にとって中央席は左右見通せる特等席なのだ。
中国道ではすべて山の中の道路を走る。周囲すべてが緑に包まれ、いかに険しい山を切り開いて開通した道路なのかがわかる。
そんなとき、対向に同じデザインのバスがやって来た。西鉄のミリオン号だ。いままさに、関門橋を渡り九州のバスが本州を走っている。ライトをパッシングし合って、数秒の挨拶が交わされた。
これが夜行だと同じデザインでも暗さから一瞬しか確認できないが、昼行の共通カラー車だと視認に余裕があり、お互い順調に運行されているよ、という報告をし合っているかのようにも受け止められた。しかし夜行でも近年は各社が統一の自社カラーとなり、便数も増えてこんな光景も見られなくなってきた。