路線バスに使われる車両は、車体のサイズごとに小型・中型・大型とジャンルが分けられていて、中型の場合はよく「全長9mクラスの中型バス」のような呼び方をする。ところが……!?
文・写真:中山修一
(バスマガジンWeb/ベストカーWebギャラリー内に各タイプのバス車両の側面写真があります)
■9mない9mのバス
9mの中型バス……車体の厳密な長さで言うと、実は「9.00m」のサイズで作られた中型バスはメーカー/車種に関係なく、日本国内にはまず存在しない。その理由は、国が定めているバス車両の「車種区分の定義」が深く関係している。定義を抜粋すると……
(1)大型バス:車両の長さ9メートル以上又は旅客席数50人以上
(2)中型バス:大型バス、小型バス以外のもの
(3)小型バス:車両の長さ7メートル以下で、かつ旅客席数29人以下
……のようになっている。これを踏まえると、長さを9.00mで作ったクルマは大型バスの枠組みに含まれ、中型バスではなくなってしまうのだ。
では一般的な中型バスの車体の長さは、何メートル何センチなのかと言えば、現行タイプでは「8.99m」で作られている車種が極めて多い。
しかし8.99mが基本でも、わざわざ「長さ8.99mの中型バス」と書くのは些か神経質に感じる。そこで、中型バスをひと括りにする際に表現しやすいよう、四捨五入+キリのいいところで「9mクラス」にしているわけだ。
中には四捨五入すると長さ8mになる中型車もなくはないのだが、大抵そういった車は希少性が高いため個別扱いになり、9mクラスの枠から自然と外れる印象が強い。
■中型と同じ要領? 小型バスの総称
では、小型バスの総称は「長さ7mクラスの小型バス」になるだろうか。小型バスは全長が7.00mまでOKなので、そう呼んでも差し支えはないハズ。
ただし最近の小型バスといえば、旧世代の車両や中国製EV等はごく少数で、路線バス向けの「日野ポンチョ」が大多数を占めているせいか、小型バスを総称で呼ぶ機会はむしろ少ないかも。
ポンチョは車体長が2種類あり、短いものが6.29m、長いほうが6.99mだ。やはり小数点以下が細かいということで、車体長の違いを強調したいときは、「6.3mのポンチョ」、「7mのポンチョ」といった感じで呼ぶのが好適。
■やや複雑(?)な大型バス
続いて気になるのが大型バスだ。大型バスのうち、高速道路を走れない一般路線向けのバス車両=路線車では、「長さ10.5mクラスの大型バス」と総称するのが分かりやすい。
長さ9m以上の車が大型バスに該当するが、日本の法律では、大型車の全長は特例を除いて最大12mまでとなっている。
日本の公道を走る大型路線車には、長さ(ホイールベース)の違いが何種類かある。現行タイプの車の寸法を細かい数値で記すと、どれも10.25〜11.45mまでの間に収まる。
しかし、いすゞ/日野・三菱ふそう製の最近の車種の長さを見ると、10.25、10.43、10.56、10.75、11.13、11.26、11.45mといった具合で、10.5mきっかりで作られたバリエーションがないのも注目すべきポイント。
では何故10.5mなのかと言えば、長さ11mを超えるタイプの大型路線車は、基準にするほど数が多くないため、間を取りつつキリのいいところで10.5mになったらしい。
ただし11m車は、10m台の大型バスに比べて明らかに長くて見た目も少し異なり、これはこれで別物として「11mクラス」の枠組みに細分化させることもある。
一方、高速バス/観光バス向けの大型車は「長さ12mクラスの大型バス」が基本的な総称になる。こちらも実際の寸法は基準キッチリの12.0mではなく「11.99m」がポピュラーだ。
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