前のこのコーナーで、長距離を運行する空港バスを紹介した。たとえば、甲府から成田空港や羽田空港に運行する路線などである。
甲府から新宿へは都市間高速バスが頻繁に運行しているが、その路線と成田空港や羽田空港への路線は別物で、それぞれは独立している。
しかし、全国には都市間高速バスが空港バスを兼ねている地域があり、それが九州である。今回は九州の高速バス兼空港バスのような路線を紹介。
文/写真:谷川一巳(バスマガジンvol.83より)
※現在の状況と異なる場合がございます
空港バスでない通常の高速バスが空港を発着する
九州は高速バス天国である。「天国」という表現が適切かどうか分からないが、九州の都市間移動に鉄道を使うのは本州からの観光客や出張客が多く、地元の人に定着しているのは高速バスだといわれる。福岡に住む友人は「福岡ではJRはなくても済むが、西鉄バスはないと困る」と話していた。九州はバスが発達した地域である。
福岡~熊本間を例にすると、西日本鉄道と九州産交バスが共同運行する「ひのくに」が1日111往復する。この数字は高速都市間バスというよりは、大都市の路線バスの頻度である。いや、それ以上の数かも知れない。
そして、この111往復中、91往復は博多バスターミナルと熊本駅前を結んでいるものの、残り20往復は福岡空港国内線ターミナル発福岡空港国際線ターミナル経由で熊本とを結んでいる。いわば空港バスである。
前号で紹介した「長距離を運行する空港バス」との違いは、福岡空港~熊本間の高速バスは、福岡~熊本間の都市間高速バス「ひのくに」の一部とみなされており、運賃も共通で、空港バスだからといって割高にはなっていない。単に空港を発着する都市間バスなのである。
実は他県から福岡空港を利用するのは容易なこと
福岡空港は市街地から近いということもあるが、他の空港よりも敷居が低くできていて身近に感じる。地下鉄でアクセスできるという気軽な空港だからか、空港を発着するバスだからといって他の一般路線より運賃が割高となる路線がない。
冒頭に福岡空港~熊本間の都市間バス「ひのくに」を紹介したが、九州急行バスの福岡~長崎間「九州」も56往復中(平日ダイヤ)、19往復は福岡空港国際線ターミナルを経由する。
同様に福岡から別府行きは福岡空港国際線ターミナル経由、日田行きの一部は福岡空港国内線ターミナル経由、湯布院行きや黒川温泉行きは福岡空港の国内線ターミナルと国際線ターミナル双方を経由、また、唐津経由伊万里行きの一部は福岡空港国内線ターミナルを始発にする。このように福岡空港は都市間高速バスと密接な関係にある。
なお、福岡空港の国内線ターミナルと国際線ターミナルの間は無料の連絡バスで頻繁に結ばれている。
この結果、たとえば、熊本に住む人は、羽田行きなど国内線利用時は熊本空港へ、いっぽう、国際線利用時は便の豊富な福岡空港へと空港を使い分けることが容易にできる。
近年は日本の国内線でもLCC(格安航空会社)の便が増えているが、どうしても成田~福岡間などの高頻度路線は便が豊富で運賃も安くなる。熊本へ行く場合でも、あえて熊本空港行きを利用せず、福岡空港に発着し、福岡空港~熊本間は高速バス「ひのくに」を利用するという賢い利用者も多くいる。
「熊本へ行くのに福岡空港に行ってそこから高速バス?」と、面倒に思うかも知れないが、福岡空港~熊本間のバス代は2060円だ。