■線路跡をほぼトレース
国鉄広尾線と同じ区間を結んでいるため、1回の走行距離は80kmを超え、普通の路線車が使われるバス路線としては長距離の部類に入る。帯広〜広尾間の所要時間は2時間30分くらいだ。
広尾側から帯広行きに乗車すると、広尾町が港町のため最初だけ海がチラリと車窓から見える。
広尾市街を出てすぐの楽古川(らっこがわ)を渡ると内陸へと進路を変え、その後は途中途中に街を挟み、十勝地方ならではの、林や丘陵、遠くに聳える山々を背景に、広大な畑に囲まれながら進んでいく。
国道336号と236号線が60系統のメインルートになる。この国道は国鉄広尾線の線路脇を縫うようにして通っている。
さすがに廃線跡を目視で確認するのは年月が経ち過ぎて難しいものの、感覚的には線路をほぼ忠実にトレースしている。
■立ち寄りスポットは盛りだくさん!!
廃線跡はともかく、駅舎に使われていた建物やホーム等は何箇所か記念に整備されている。1970年代に話題となった幸福駅もその一つ。バスの広尾線では「幸福」が最寄りで、駅跡まで約500mだ。やや遠いが車窓からも見える。
「コスモール大樹」「道の駅忠類」「道の駅なかさつない」と、バスの経路上に道の駅が3箇所あるのもユニーク。1〜1時間半に1本くらいの間隔でバスが来るなら、途中下車しての立ち寄りも十分選択肢に入る。
また、所要時間の長い路線バスで気になるのがトイレ休憩。広尾線にあるかと言えば……時刻表に記載されている通り、帯広から約1時間40分、広尾から約50分の「忠類」で休憩をはさむ。
時刻表には出発時刻しか書かれていないが、実際利用した際は遅れがなかったので、忠類で4分ほどの停車時間があった。ちなみに道路を挟んでバス停の向かい側奥に、旧・忠類駅の駅舎とホーム、貨車数両が保存されている。
■コンスタントな利用
十勝バス広尾線に何度か乗ってみて、距離の長い路線バスでは珍しい、限りなく始発から終点まで行く長距離利用や、途中の停留所もコンスタントに乗降がある路線だな、という印象を持った。
帯広に近いエリアでは、時間帯によっては通学利用が加わって、満員になることもある。最初から最後まで閑散としていることが多い国鉄代替バス系の中で、旺盛な利用が見られるのは珍しい。
十勝バス広尾線の停留所の総数は162。日本一長い距離を走る奈良交通・八木新宮線の168に迫る数の多さに目を見張る。全区間乗車時の運賃は1,910円だ。
帯広駅起点でJRにならなかった鉄道路線に、広尾線のほか北を目指した士幌線があり、現在は十勝バスと北海道拓殖バスが代替バスを走らせている。
両方セットにすれば、十勝地方で線路を南北タテに伸ばそうとした国鉄線の片鱗に、ちょこっとだけ触れられるかも!?
【画像ギャラリー】十勝バス広尾線と国鉄広尾線の面影(9枚)画像ギャラリー
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