現在の高速バスは都市間を高速自動車国道で結ぶバスを指す場合が多い。もちろん明確な規定はなく事業者により種別設定は異なるが、同一県内完結の路線や有料道路しか通行しない路線を「特急バス」としているところもある。今回はその特急バスに乗車したのでレポートする。
文/写真:東出真
編集:古川智規(バスマガジン編集部)
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■県内完結の特急バス
今回乗車するのは長野県大町市だ。長野県の北部に位置し、長野県から富山県へ抜ける立山黒部アルペンルートの玄関口となる街である。鉄道を知る方には信濃大町といった方がピンとくるかもしれない。
オンシーズンは多くの観光客が黒部ダムのある扇沢へ向けてバスに乗り込む。雄大な北アルプスを望むことができ、3000m級の山々が見せてくれる風景には圧倒される。
その北アルプスからの雪解け水が湧き出すことにより美味しい酒や蕎麦などが有名である。そんな観光の出発点ともなっているのが前述したJR信濃大町駅である。
筆者が着いた朝も扇沢駅へ向かうバスが待機していて、たくさんの乗客が出発を待っていた。今回はこちらではなく、隣のバス停で待機する。定刻にロータリーにバスがやってきた。これが今回乗車する特急バス長野行きである。
■予約不要の座席定員制
この特急バスは通称「雷鳥ライナー」と呼ばれ、長野と信濃大町を1日5.5往復している。起点は朝の1便を除き扇沢駅となっていて立山方面から来た観光客が一気に長野市まで移動することが可能だ。
また長野からの朝の初便は善光寺大門が起点となっており、善光寺参りやその周辺のホテルに宿泊している観光客が扇沢駅まで乗り換えなしで向かうことができる。
この日は大町温泉郷を経由して到着した便で、すでに数名の乗車があった。乗車の手続きを済ませ空いている座席に座った。座席指定ではないので自由席だ。
ただし座席定員制なので満席の場合は乗車できない。運賃は乗車口に券売機が埋め込まれ、座席券が出てくる仕組みだ。現金の他にタッチ決済対応のようだ。
■バスが新聞配達?
乗車が終るとバスは走り出した。乗車手続きに時間がかかったため、5分ほど遅れて出発した。市内を走行するバスは、長野大町線といわれる県道31号線に入ると一気に山の中の風景へと変わっていく。
次の停車は新行(しんぎょう)というバス停である。道の片側にしかバス停がなく、今回走行している長野方面の道路には何もない。1人立っている人がいてバスは停車した。
見た感じはバスに乗車する様子にはみえなかったが、運転手がバスの扉前に置かれた新聞を手渡すとすぐにバスは動き出した。
あとで気がついたことだが信濃大町駅で乗車の手続きをする前に、運転手がバス停の下に置かれていた新聞を受け取ってバスの扉前に置いていた。
筆者は運転手が購入した新聞なのかと思っていたが、どうやらここで新聞を受け取り、この新行バス停で新聞を届けるという配達も担っているようだ。
降車時に運転席に掲示されていた行程表に「新聞」というシールが貼られていたので、毎日こうした新聞配達が行われているようだ。
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